ポップ・アイ

シンガポール/タイ 2017
監督、脚本 カーステン・タン

ポップ・アイ

象と中年男のタイ縦断の旅を描いたロードムービー。

さて、なぜ中年男は象と連れ立って旅せにゃならなかったのか?

ま、早い話が色々疲れちゃってたんですね、主人公。

嫁との仲はさめてるし、会社じゃロートル扱い。

どこにも居場所がない。

そんな時、街で偶然、幼い頃に生き別れた象と出会う。

そうだ、象と故郷に帰ろう、と中年男は思うわけだ。

しかし幼い頃に象を飼ってた、ってのもすごい話なんですが、町中を象と歩いてて咎められない、ってのがこれまたタイならではで。

とりあえず「中年男と象」という構図が、他じゃあまず見られない絵であったことだけは確か。

ストーリー云々以前に絵面だけでなんだかインパクトがあるというか、予測が成り立たないというか。

なんだか目を離せないんですよね、画面から。

ちなみに物語に大きな起伏はありません。

警察に捕まっちゃったりもするんですけど、そこはお国柄か、何もかもがゆるい。

パトカーと呉越同舟の旅になったりもして。

で、えてしてロードームービーというと破滅的であったり、死が間近にあったりしがちですが、それもどちらかというと遠い感じでして。

主人公、希望をなくしてはいるんですけど絶望してるわけじゃない。

故郷まで向かおうという意思は固いんですが、その先のことを思いつめてたりする風でもない。

私もちょっとびっくりしたんですけどね、象との旅を終えてたことが実はなにも主人公にもたらさないんですよね。

いうなれば日常からの逃避。

しかも何日も道行きを共にしたかわいい象の顛末が、呆れるほどなげやりでして。

エンディングなんて、結局そこに落ち着いちゃうのかよ!とあたしゃあっけにとられた。

これだけのことをやらかしておいて結局そこ?!みたいな。

これを「再生のための巡礼の物語である」とかいう人もきっと居るんでしょうけど、問題が解決してもいないのにまあいいんじゃない?としちゃうあたりに国民性を感じたりしましたね、私は。

てか、象をちゃんとしてやれよ、って。

それとも象はなにかの暗喩だったのか?

わからん。

中年男、ひと夏の冒険、ってな映画でしたね。

享楽的というとまた違うんでしょうけど、あまりにのどかで、全部まあいいか、で済ましちゃうような有様に、気候が温暖で暮らしやすいとドラマの色合いも変わってくるのか、と思ったりしました。

タイ映画って、すれ違いのダイアリーズ(2014)とアクションものしか見たことないんですが、数を追っていけば他にない発見があるかもな、という気も少ししましたね。

あと、タイトルのポップ・アイですが、象の名前、ポパイのことです。

なぜ区切られてるのかは不明。

変わり種がお好きな方は見る価値あるかもしれません。

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