フランス/ベルギー/ポーランド 2017
監督 ロマン・ポランスキー
原作 デルフィーヌ・ド・ヴィガン

書けない女性作家の元に、突然現れたファンを名乗る女性との奇妙なかかわり合いを描いたサスペンス。
ま、知ってる人は誰もがスティーブン・キングのミザリー(1990)を思い出すんじゃないか、と思います。
アレの女性版なのかな?と。
実際ストーリーも、ファンの女性が徐々に奇矯な行動をとりはじめていく様子を追って行きますし。
終盤の展開なんてほぼ予測の範疇。
ついに正体を表しやがったか、ってなもの。
さて、動機はなんなんだろ?独占欲?もしくはストーカー気質が高じてこうなった?それがよくわからないからおそらくエンディングで明かされるんだろうなあ、なんて思ってたら、一切の説明なしでうやむやのままあっけなく終幕。
は?
なんだこれ?
わけがわかりませんよ、と。
かの名匠ポランスキーもついに激しくスベったか、と。
うわー、これ箸にも棒にもひっかからんぞ、などと私は嘆いたりもしました。
目新しくないばかりか、伏線もなけりゃオチもない。
こりゃさすがに酷評せざるをえんか、と思ってたんですよ。
でもちょっと待て、俺、と。
ひとつだけ引っかかる点がね、実はラストシーンにあって。
ラストシーンというかエンドロールですかね。
「これは実話に基づく物語」ってテロップが出るんですよね。
実話ものでこんな不可解なことをやるだろうか?と思ったんです。
で、気になる場面をもう一度繰り返して見てみたんですよね。
あっ、と声を上げたのはエンディングで女性作家が夫と、ファンの女性について会話するシーン。
ある仮説が閃光のように脳裏をよぎります。
なんだよ、ミザリーじゃねえかよ!と思って見てたけど、実はこれアレと同じなんじゃないか?と。
アレがなんのことなのか、ネタバレになるんで書けないんですけどね。
そう考えることでしか、すべての辻褄が合わない気がして仕方がない。
あとでネットを検索してみたら、同じ結論に達していた方が大勢おられたんで、おそらく間違ってないだろうと思うんですが、しかしまあ、なんと観客を突き放した仕上がりかと。
映画館で見てた人の大半は見破れなかったんじゃないか、と思いますね。
それほどに不親切。
いや、不親切と言うか、実はこういうことだったんですよ、と匂わせるカットなり、示唆する文脈が皆無なんですよね、この映画。
すべてはエンディングの数分で真実を推し量るしかない。
うーん、どうなんだろう、と。
いや、驚きはしました。
そうきたか、と舌を巻いたのは確か。
けどね、それならそうで、もう少しパラドキシカルな演出があってもよかったんじゃないか?と私は思うんですよね。
振り返って考えるなら、女性作家とファンのやり取りに無理がありすぎるような気がしてくるんです。
後付けでこういうオチにしたように思えてくる。
結果、謎めくサスペンスというより、仕掛けの下手などんでん返し映画になっちゃってる。
中盤ぐらいまでが退屈、と言われるのはそのせいでしょうね。
凡作だとはいいませんが、ポランスキーという大看板に恥じぬ一作だとは認め難い。
監督も80歳超えてますしねえ、仕方のないことなのかもしれませんが、残念ながら往年のキレはないですね。
どことなくテナント(1976)と似てるな、と思ったりもしました。
ちなみに主演を努めた監督の嫁のエマニュエル・セリエですが、悩める女性作家という役柄にあんまりマッチしてないような気が私はしました。
エヴァ・グリーンがすごかったんで、翳っちゃったのかもしれませんけどね。
何かと悩ましい映画、というのが結論ですかね。