ディメンションW

2011年初出 岩原裕二
スクエアエニックスYGコミックス 1~11巻(全16巻)

第4の次元軸「W」が発見され、世界的なエネルギー革命の起こった未来で、不正コイルの回収を生業とする男を描いたSFアクション。

1巻を読了して、こりゃ久々に本格SFが来た!と震え上がりましたね、私は。

未来を舞台にした大抵のSF漫画って、攻殻機動隊がヒントになりました、みたいなのがここ十数年ずっと続いていたように思うんです。

というか、こと漫画の世界においては攻殻からほぼ先に進んでなかったような気さえする。

スチームパンク、SFファンタジーを除外するなら、ほとんどの作品がネットの行き着く果て、テクノロジーの進化を創造の糧としてた。

あとはAIですかね、流行りとしちゃあ。

ま、SFは本気度が高まれば高まるほど人気が下降するやっかいなジャンルですから、新しいもの、挑戦的なものが産まれにくいのは確かなんですけど、本来なら想像力をとことん試される分野であるはずなのに、それが画一化してるってのはやはりSF好きとしちゃあ残念極まりないわけで。

そこに来て「送電線を不必要とするニコラ・テスラの発案が現実化した世界」の話ときちゃあ、胸踊らないはずもなく。

いったいどんなまだ見ぬ世界を絵にしてくれるんだろうと。

で、次元Wってのはいったいなんなの?コイルの仕組みは?Wの具象化ってどういうこと?可能性の虚無って?と、もーあれこれ好奇心が刺激されまくって収まりがつかない状態でございまして。

期待を込めて次から次へと巻を重ねていったんですね、私は。

そしたらですよ。

11巻を過ぎてもちっとも世界に言及しようとする気配がない・・・。

なんだかもう狐につままれたような気分。

知りたいのは次元Wの謎であり、コイルがなにを世界にもたらしてるか、なんです。

断片的に明かされていく事実はあるんですけどね、ストーリーは世界の成り立ちよりも、キャラクターをどう動かして冒険活劇を演出するか?に比重が割かれがち。

うーん、これはある種のヒロイックファンタジーじゃねえのか?と。

コブラとか、あの手の。

ぶっちゃけね、サブキャラであるアンドロイドのセラとか私はどうでもいいんです。

むしろその存在自体がむず痒かったりする。

なのに物語は次々と新キャラが登場してきて、バトルに継ぐバトルみたいな様相を呈してきて。

うーん、これはこれで間違っちゃあいないとは思うんですよ、でもね、大風呂敷をたたむ気配のない筋立てを、キャラ重視で延々引っ張られるのはいささか辛いわけです。

少なくとも私が期待してる方向性じゃない。

掲載誌の誌風も影響してるのかもしれませんが、最初の興奮が読めば読むほどしぼんでいくシリーズでしたね。

11巻にて撤退。

岩原裕二は好きな漫画家なんですけどね、今回はちょっと私には合いませんでしたね。

またいつか新作で出会えれば、といったところでしょうか、残念。

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