ウインド・リバー

アメリカ 2017
監督、脚本 テイラー・シェリダン

ウインド・リバー

先住民保護区であるウインドリバーにて発生した、17歳の少女殺害事件を追う地元のハンターとFBIの捜査官を描いたサスペンス。

さすがはボーダーライン(2015)の脚本家、テイラー・シェリダンのペンによる作品だけはあって、最後まで隙なし、淀みなし、緊張感の途切れることなしで、なんとも感心させられましたね。

謎の投げかけ方といい、少しづつ明らかになっていく事実といい、サスペンスとして一級品の出来。

それほど物珍しいプロットでもないと思うんですが、全く退屈しません。

これはもう力量と才覚の賜物という他ない。

キャラクター作りのうまさもさることながら、保護区という特異な地域で生きる人々の内面を、説明的になりすぎないセリフで的確に表現していく手腕にもしびれましたね、私は。

謎解きを追うだけでウインドリバーがどういう場所で、人々がどう暮らしているのかが想像できるし、伝わってくる。

できそうでなかなかできないんですよ、これ。

物語の佳境において、いきなり派手な銃撃戦をぶちこんでくるセンスもいい。

何が起こってるんだ!と釘付けですよ、もう。

ま、事件の真相を、フラッシュバック風にああいう形で挟み込んでくるのはどうか?と少し思ったりはしたんですが、監督経験が少ないことを鑑みるなら許容できなくはない。

この場所に生きる人達には、その人達なりのやり方があり、挟持がある、と納得させるだけの説得力があるんですよね、物語に。

ぶっちゃけオチにさほど意外性も驚きもないんですけどね、それでも面白かった、と言えてしまうのがこの作品の魅力でしょうか。

ただ、もしテーマがネイティブアメリカンの悲憤にあるのだとしたら、その点に関してはいささか及び腰だったような気がしなくもありません。

局地に生きる人間が、辺境であるがゆえに悲運にも巻き込まれてしまった事件、で終わっちゃってるんです。

そこに強いメッセージ性は汲み取れない。

もちろん簡単に想像はつきます。

なぜ被害者は被害者になってしまったのか?に思いを馳せれば、その裏側にあるものは容易に形を成す。

あえてそういう演出にしなかったのか、それともできなかったのかはちょっと判別つかないですね。

テイラー・シェリダンならさらに掘り下げることぐらい、余裕だったと思いますし。

なにをこの映画に求めるかにもよるかとは思いますが、なんせ作品自体のクオリティが高いんで、私はとりあえずそれで満足。

なかなかないですよ、ここまで集中して見れる作品って。

上出来の部類だと思います。

見て損はなし。

余談ですが似た題材でこういう映画もありました。

比較してみるのも一興かと。

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