アメリカ 2017
監督 ジョージ・クルーニー
脚本 ジョージ・クルーニー、コーエン兄弟、グラント・ヘスロヴ
1950年代、郊外に作られたニュータウンを舞台に、予期せぬ強盗事件に遭遇する家族を描いたクライム・サスペンス。
コーエン兄弟が執筆するも発表していなかった脚本にジョージー・クルーニーが手を加え映画化した作品らしいんですが、どの程度の改変が加えられたのかはさておき、この映画、ぶっちゃけ色々まずいことになってる、ってのが実状ではないかと私は思いますね。
まず、決定的に失敗してるのは当時の人種差別問題と、チンケな事件を同時に描こうとしてること。
これね、黒人差別が事件に根深く関わってる、ってのならわかるんです。
おそらくジョージ・クルーニーが作品を通じて訴えたかったことって、過去の誤ちから目をそらさず悔い改めよう、ってことでしょうし。
差別問題に敏感な昨今のアメリカ社会において、タイムリーな題材だ、と思ったんじゃないか、と。
ところが物語はですね、事件の推移に右往左往する家族を追うのに一生懸命で、肝心の黒人差別問題は全くその顛末に関わってこない。
完全に別物として、お互いが垣根越しに経過を見守ってるだけ。
なんで人種問題が、安っぽい痴情沙汰の賑やかしになってんだ?って話であって。
そもそもメインで進行していく強盗事件って、どっちかというとクライムコメディっぽい文脈のシナリオだな、と私は思うんですよ。
それこそコーエン兄弟のお得意とするところの。
それをシリアスに味付けしなおして、さらには人種問題まで絡めようとすること自体がそもそも間違ってるし、履かせた下駄の高さがちぐはぐになってる、って監督は気づかなきゃいけない。
またオチというかラストシーンが、見事なまでにどこへも行けてなくて
うーん、クルーニーはあんまり監督業に向いてない気がしますね。
コーエン兄弟をお手本としたかったんでしょうけど、笑えないし、啓発されるわけでもない、毒があるわけでもない、という困った一作。
シナリオの段階で誰か止めてやりなさいよ、って映画でしたね。