スペイン/カナダ 2015
監督、脚本 アレハンドロ・アメナーバル

アメナーバル監督、久しぶりの新作で、しかもジャンルはサスペンス、ときてはこりゃ期待するな、という方が無理というもの。
私にとってフェイバリットとも言える一本、オープン・ユア・アイズ(1997)やかつて賛否両論、話題になったアザーズ(2001)をもう一度、と思ってる人は決して少なくはないと思うんですよね。
えっ、知らないって?
またまたご冗談を。
一体今回はどのような衝撃のエンディングが待ち受けているのだろうと。
もう、胸の高まりが抑えられない状態。
こういう予断がよくないのはわかってるんです。
わかっちゃいるんだが、なんせ寡作なものだからついついハードル上げちゃうのを自分で抑えられない。
で、勢い込んで視聴にのぞんだわけですよ。
ワンカットも見逃すまいぞ、といった状態だ。
なのに、なのにだ、監督よ。
えっ、題材は悪魔信仰?
んで、1990年、ミネソタ州のお話?
うーん、当時悪魔崇拝が半ば都市伝説のようにアメリカ社会に蔓延していたのは知っています。
ちょうどグランジ(ロックミュージック)が台頭し始めてきた、湾岸戦争真っ只中の暗い時代ですよ。
でもそれ、今あらためて掘り下げるほどのネタか?と。
もはや悪魔崇拝自体が映画の題材としては使い回されて腐臭をはなってる状態だし、90年代のオカルティックな流説が、現代の社会情勢となにか通ずるようにも思えない。
なんといいますか、全体を通じて「どこかで見たような感じ」が強く香るんですよね。
邪教集団の影に怯える演出とか、退行催眠で事実を暴こうとする展開とか。
作品冒頭で「現実の事件に着想を得た」とテロップが流れますんで、おそらくは突飛になりすぎることなくリアリズムに徹しようとしているんでしょう。
けどそれが退屈、ってのは確実にあったように思うんですね。
多分監督なら悪魔の存在自体にまで言及する勢いで、虚々実々の悪夢的情景を現出させることも可能だった、と思うんです。
なのにそっちの方向へさっぱり進んでくれない。
なんか小ぢんまりしちゃってるんですよね。
またオチがなんとも安っぽいテレビドラマみたいで。
「ま、それはないだろう」と私が一番最初に除外した推理が、そのままオチだったりするんです。
いやね、構成は緻密だし、シナリオ運びも達者でした、それは間違いない。
でも面白くない・・・。
ただひたすら残念、としか言いようがないですね。
この題材のなにがアメナーバル監督の興味をひいたのか、私にはさっぱりわからん。
ファンとしてはなかったことにしたい一作、相すまぬ。