ヘル・レイザー

イギリス 1987
監督、脚本、原案 クライヴ・バーカー

ヘル・レイザー

御大スティーブン・キングも諸作を絶賛した90年代きってのホラー作家、クライヴ・バーカーの初監督作品。

10数年ぶりぐらいに見直してみたんですが、いやね、普通にうまいんでびっくりしましたね。

作家がメガホン握って成功するケースって、殆ど無いように思うんですが、クライヴ・バーカーに限っては数少ない成功例、と言えるかもしれません。

自らイラストやフィギュア制作を手がけるなど、アートに関する造詣が深いこともきっとプラスに働いたんでしょうね。

やっぱりこの作品の場合、なんといっても魔道士のビジュアル、そのインパクトの絶大さたるや革命的だったように思いますし。

初めてピンヘッドやフィメール、バターボール、チャタールが並んだ絵を見たときは腰がぬけましたもん。

ボンデージファッションから派生したものであることはなんとなく想像がつくんですが、そこに忌まわしさと猟奇をかけ合わせて退廃美とするなんて、なかなか考えつかないと思うんですよ。

映画の世界のみならず、他の分野に視野を広げてさえ80年代後期にこんなことは誰もやってなかった気がしますね。

異形を体現する上で、これほどの説得力を持つキャラクターなんて、長いホラー史を振り返ってみてもほとんど存在しないんじゃないですかね。

余談ですが三浦建太郎の「ベルセルク」は間違いなくこの映画の影響受けてますね。

ゴッドハンドの造形なんてそのままですもん。

また「究極の快楽の扉」を開けることが、生と死をも超越してしまう、といった物語世界の筋立ても、斬新きわまるものでした。

いわゆるキリスト教的二元論じゃないんですよ。

天国でも地獄でもない、正邪を問わずして死の向こう側に別世界が存在するといった概念は、宗教的くびきから解き放たれた新たなる精神世界の構築を意味してた。

マゾヒズムの極北もここまで大風呂敷を広げられたらたいしたもの。

ま、若干ね、シナリオが昼ドラみたいになっちゃったのと、継母ジュリアの行動に忌避感がなさすぎる、説得力に欠ける点がネックかとは思いますが、これだけの素材とオリジナリティーを提示されちゃあ、出かかった文句もひっこむというもの。

初監督作とは思えぬ80年代ホラーの秀作だと思いますね。

周りがやれゾンビだー、死霊だー、吸血鬼だー、ってやってた頃に、一人ホラーの新たな地平を見つめていたバーカーの、類するもののない意欲作だと思いますね。

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