アメリカ 2018
監督 ジョン・クラシンスキー
原案 ブライアン・ウッズ、スコット・ベック

音をたてると得体の知れない怪物に秒殺される、荒廃した世界を描いたSFアクション。
特異な舞台設定ばかりが取り沙汰されて、なんとなくシチュエーションホラーみたいな扱いになってますが、これ間違いなくSFです。
しかも侵略SF。
襲い来る怪物は外宇宙より飛来した宇宙人で、盲目だが異様に聴覚が発達していてなすすべなし、という筋立てなんですよね。
なんだか南米に生息する軍隊アリみたいだなあ、と思ったり。
軍隊アリの場合は振動と匂いですけどね。
はっきり言って宇宙戦争(2005)とほぼ同じ物語構造、と言っていいと思います。
つまりはSFとして、決して目新しくはなく、どちらかと言えば古典の部類だ、ということ。
また、オチまでもが宇宙戦争と似た感じで。
「ここまで世界が荒廃する前に、誰か気づけよ!」とつっこめてしまうのが、どうにも脱力というか。
どことなくドント・ブリーズ(2016)を思い起こさせる着想なのも個人的にはマイナス。
知らなかった、とは言わせんぞ、監督。
邪推ですけどね「もしドント・ブリーズの閉鎖的な恐怖を世界にまで押し広げるなら、侵略SFの体で虫みたいな宇宙人を登場させるのがいいんじゃないだろうか?それなら荒唐無稽でも無理が効く」と考えたんじゃないのか?と。
わかりませんけどね。
どちらにせよ「音」に執着することで、翻案の思考プロセスを容易に察することができてしまうぐらい粗末になってしまったことは確か。
今、この程度のアイディアで大手を振られてもなあ、というのが私の場合は確実にあった。
ただね、それを踏まえた上で「逃げ惑う家族の物語」としてストーリーを編み上げていたことに関しては、聡明だったなと思います。
音を立てるな!と言い聞かせても、どうしたって子供は不用意で不用心ですから。
一家全体を危険に晒すようなことをついやらかしちゃう。
そこに良質なスリルとドラマが産まれていたことは事実でしょうね。
家族愛に焦点を絞ったことは、今のアメリカで上手く時流に乗ってる、と言えるかもしれません。
ヒットの理由はそのあたりにあったのかも。
あと、 娘役に起用された本物の聾者である、ミリセント・シモンズの達者な演技も作品に華を添えてましたね。
手話がものすごくマジっぽいなあ、と思って見てたら口パクじゃなかったという。
プロットの安直さをリアリズムでカバーした作品、というのが正解かもしれません。
あんまりハードルをあげすぎて見ると失望するかもしれませんが、予備知識無しで見れば思わぬ拾い物、ってのが実状じゃないでしょうか。