韓国 2017
監督、脚本 カン・ユンソン
2004年、ソウルで実際に起こった事件を元に、警察とヤクザの抗争を描いたクライム・アクション。
質感としてはかつての東映ヤクザ映画に近いものがあるかもしれません。
そういう意味では孤狼の血(2017)とかぶってるな、と言う人もいるかも。
お互いが双方の作品を意識した、なんてことはないんでしょうが、違いがあるとすれば、孤狼の血が新人刑事の目線を通した彼自身の転機を描く壮大な裏社会ドラマであったことに対し、こちらの方はどっちかというとバイオレンス重視の活劇と言える点でしょうか。
一応、破天荒だが正義感の強い刑事が主人公として登場するんですけどね、あんまりリアリズムだとか、物語の背景にはなにがあるのか?とか、きっちり検証しようとする気は作品にないです。
捜査が思うように進まなくて苦悩したりとか、ままならないことはそれなりにシナリオのフックとして存在してるんですけどね、基本、香港映画の路線かと。
で、なんで私がこの映画を見ようかと思ったのか、という話なんですが、韓国で大ヒットした、という事実もさることながら、やはり主演にマ・ドンソクが抜擢されてたから、に他なりません。
新感染(2016)での七面六臂な大活躍をいまだご記憶な諸兄は、私のほかにもきっとたくさんおられるはず。
あのマ・ドンソクが主役を張るのか!こりゃ見なけりゃ!ってなもの。
いやもうね、ほとんどWWE(アメリカのプロレス団体)状態でしたね、マ・ドンソク。
だってね、敵は刃物持って身構えてるのに張り手一発でのしちゃったりするんですよ、アニキ。
お前はどこの幕内力士だ!と思わずつっこむ私。
やっぱりね、元格闘家でトレーナーもやってた、という経歴が物語る肉の圧力が半端じゃない。
動けるデブなのかな?と思いきや、シャツを脱いだ姿を見てびっくり、全部筋肉なんですよ。
いわゆる固太りってやつですか?
K-1やベラトールで活躍したマイティ・モーを想像してもらうとちょうどいいかも。
アレが巨体をゆすりながら、ばったばったと細身のヤクザをふっ飛ばしていくんですな。
そりゃ勝てるわけねえわ!と納得の破壊力&威圧感。
また格闘シーンが泥臭くてねー。
ジャッキーやドニー・イェンみたいに高速で組み手を展開するんじゃなくて、ひたすら体力を削り合う殴り合い。
シンプルにケンカです、ケンカ。
んで、最後にはケンカの強さでなにもかも全部解決しちゃうんだから、これ、どんなスター映画なんだよ!って驚くやら呆れるやら。
内容がない、とまでは言いませんが、マ・ドンソクファンのためのマ・ドンソクの映画でしょうね、これは。
下手すりゃスティーブン・セガールの沈黙シリーズになってた危険性もあったかとは思うんですが、ま、そこはギリギリ回避してた、ということにしておきましょうか。
新感染のドラマ性を期待すると肩透かしかもしれませんが、突如韓国に現れた肉体派スターの一作としてはまあまあ及第点ではないでしょうか。
アメリカ進出も決まったらしいですが、ハリウッドが彼をどう扱うのか、期待してやみません。