フランス/ベルギー 2017
監督 、脚本 ドミニク・アベル、フィオナ・ゴードン

カナダの田舎町で働く未婚の中年女性、フィオナのおのぼりさん丸出しなパリ珍道中を描いたコメディ。
さて監督、脚本を務めるアベル&ゴードンですが、私生活は夫婦で本業は道化師だそう。
御本人曰く「道化師として映画を撮っている」とのことですが、それがどういう意味なのか、字面を追うだけではよくわからなかったりはします。
副業ってわけじゃあないんでしょうけど、道化師にしか撮れない映画がある、ってことなんでしょうかね?
そうなのか?
ともあれ、私の感触ではこの映画、良くも悪くもコントっぽいです。
動きで笑わせようとしてるのはわかるんですが、それがスラップスティックであるとか、チャップリンの系譜である、というより、どこか舞台芸っぽいんですよね。
そこはまさしく道化師としての本領発揮なのかもしれませんが、これがこと映画となると、どこかわざとらしさがつきまとうというか、過剰に感じてしまう部分も無きにしもあらず。
特に序盤の雪風が室内に吹き込むシーンなんて「調子にのりすぎ」だと私は思った。
なんだか白けてしまうんですよね。
受け止め方は人によって違うかもしれませんせんけど。
もちろんそんなオーバーリアクションが活きる場面もたくさんあります。
フィオナを平気で川に突き落としたりとか、ヒロインを遠慮呵責ない「汚れ役」に貶める演出には思わず吹き出してしまいましたし。
笑いをかっさらう手管は堂に入ってる、とは思った。
シナリオもよく練られてます。
ホームレスと婆さん、フィオナの関係性を最終的にあんな風にまとめちゃうの?と少なからず驚かされましたしね。
なんだろう、独特な価値観というか人生哲学が息づいている作品であることは確か。
あとはそれをこういう形で表現する流儀に「のれるか」「のれないか」でしょうね。
映画的であることからはいささか逸脱しているかもしれませんが、それが心地よく感じられる人にとっては小さな宝物のような一作となりうるかもしれません。
不思議と記憶に残る、というのはありましたね。