1989年初出 板橋しゅうほう
大都社
局地地震の影響で選ばれた人間しか住めなくなった東京を舞台に「生きている金属」に操られる男たちの戦いを描いたSFアクション。
主人公の右腕が義肢、というと死霊狩り(平井和正)をつい思い出してしまう古いSFファンな私ですが、やってることはいつもの板橋アクションです。
むしろ右腕が主人公と同化して主人公と話す、という設定からは寄生獣(1988~)との相似を指摘するべきなのかもしれませんが、実は連載はほぼ同時期。
つくづくついてない、板橋しゅうほう。
ミギーになり変われたかもしれんのになあ。
アイディアの核となってるのは錬金術におけるメルクリウス(水銀)のようですが、そこから世界規模の災厄にまでストーリーが発展するのはいつものパターン。
昨日の敵が今日の味方になる展開もおなじみといえばおなじみ。
ただ、だからつまらないのか?というと、決してそうではなくて。
ドラマ作りはしっかりしてるし、アクションの見せ場も満載。
水準以上のことは普通にやってると思います。
ファンからすれば、どことなく凱羅に似てるなあ、と思ったりもするんですけどね。
ヤングキングに連載された作品ですが、どうやら人気が伸び悩んだらしく、最終回間近は恐ろしく駆け足な進行。
もうちょっとじっくり描くことができてたら後の評価も変わってきていたのでは、と思うんですが・・。
皆川亮二のARMS(1997~)とそんなに違わない、というのはファンの欲目がすぎる意見でしょうかね?
結局多くの漫画読者は、SFが強く香りすぎると駄目ってことなんだろうなあ、と今更ながらに思ったりもします。
いささか少年漫画的すぎたのも敗因かもしれません。
とはいえ、これといって出来が悪いってわけでもない、致命的な失敗を犯してるわけでもないのが歯がゆいかぎりですね。
円熟期の、油の乗った一作なのは確かです。