イタリア 1951
監督、脚本 フェデリコ・フェリーニ
原案 ミケランジェロ・アントニオーニ

新婚旅行で訪れたローマで、憧れの映画スターに会った新妻がなし崩し的に映画のロケ地にまで連れて行かれ、宿に帰れなくなってしまうドタバタを描いたコメディ。
いわゆる巻き込まれ型のお笑いなんですけど、これがとても70年前の作品とは思えぬ面白さで。
フェリーニ初監督作品らしいんですが、なんかもう完成しちゃってる、と私は思いましたね。
笑いのツボをついたキャスティング、シチュエーション作りが実に巧みなんです、監督。
特に私がおかしかったのは新郎役を努めたレオポルド・トリエステ。
どこからこんな俳優引っ張ってきたんだ、と訝しむほどに新婦が居なくなって慌てる新郎役がはまってる。
ほとんど顔芸じゃねえかよ!と、とっこみたくなったりもするんですが、オーバーアクションがサマになってるというか、もともとそういう人なんじゃないか?と錯覚しそうになるというか。
映画スター役を努めたアルベルト・ソルディもいい。
二枚目のようで二枚目じゃない田舎のスター風なたたずまいで、プレイボーイを気取る役柄がマッチしすぎてて。
で、フェリーニはそんな役者陣をまさに手駒のごとく物語の中で完全にコントールするんですね。
もうちょっと遊んでもいんじゃないかな?と、私は思ったりしたんですが、ちょっと物足りないぐらいの引き際の良さで、テンポよくすたすたストーリーを進めていく。
物語の締めも小粋です。
他愛ない、といえばそれまでなんですけど、世間知らずなお嬢様である新妻が小さな冒険を経てたどり着いた結論をね、きちんと落とし所として見せるすべを心得てるんですよね、監督。
私が驚いたのは、ここでアップだな、と思ったらちゃんと人物がアップになって、ここで一旦建物を映して、と思ったら、カメラが建物の方を向いたこと。
いや、私が優れてると言いたいわけじゃないんです、年間数百本を鑑賞して演出のセオリーがなんとなく読めるようになってる人間が考えることと同じことを70年前にもうやってる、ってのがすごいんであって。
さすがはイタリアの巨匠、と舌を巻いた次第。
佳作ですけどね、全く隙のない一作だと思いますね。
構成のみに着目するなら完璧なんじゃないか、と言う気がします。
くすくす笑えて、どこかかわいらしい、鮮烈なデビュー作ではないでしょうか。