イギリス 2016
監督 ロネ・シェルフィグ
原作 リサ・エヴァンス

第二次世界大戦下のロンドンで、初めて映画の脚本作りに挑む女性シナリオライターの奮闘を描いた作品。
劇中で制作される映画がダンケルクの救出作戦を題材したもの、というのがニヤリとさせられたりもするわけですが、クリストファー・ノーランのダンケルク(2017)と特になにか接点があるわけではありません。
そもそもがこちらの素材であるダンケルク、英国国民の戦意高揚を画策したプロパガンダ映画、という設定でして。
主人公が属するのも情報省映画局。
あちこちから横槍が入ってくるわけです、映画の内容に。
そんな内容だと士気が落ちる、とかね。
で、普通ならですよ、ヒロインのカトリンがそんな圧力にも屈せず、作りたいものを作るために戦うのかな?と思うじゃないですか。
というのもですね、カトリン、「人生の1時間半を捧げても価値のあるものだったと思うような映画を撮りたい」などと、素晴らしく志の高いセリフを吐いたりするからなんです。
ところがだ。
物語は映画の内容そのものに焦点を当てることなく、カトリンのラブロマンスみたいな方向に舵を切っていく。
あれ?ってなもんです。
政府御用達の戦争礼賛映画を作ってること自体は別に構わないのか?と。
そこを疑問視せずして、老練なセールスマンのような交渉術の巧みさばかりを見せつけられてもですね、まあ、あんまり共感はできないですよね。
後半のストーリー展開もまるで韓流ドラマのような悲劇の押し売りがいささか目立つ傾向にありまして。
シナリオ作りは作為的なものなんだよ、なんて劇中で放言しておきながら、それをそのままストーリーでなぞってどうする、と。
作為的などといいながら作為を感じられない出来栄えを呈示するからこそ、セリフも生きてくるんであって。
空爆シーンの緊張感のなさも気になった。
日常に持ち込まれる非現実の演出が下手なんですよね、この監督。
道歩いてました、突然建物が爆発しました、空爆ですよ、ってまるで棒読みなんです、一連のシークエンスが。
だから戦時下である、という痛ましさが一向に伝わってこない。
ラストシーンもなんだか拍子抜け。
これだけの犠牲を払っておきながら、結局お前は手先のままでいいのかよ?みたいな。
ニューシネマパラダイス(1989)を想起させる映画愛に溢れた胸を打つシーンもいくつかあるんでね、全否定はしたくないんですが、本質に言及することなく上辺のドラマだけで全部完結してしまった映画、という印象ですね。
戦争を絡めない方が良かった、というのが結論。
時代背景が手に負えてない一作ですね。
女性の社会進出と恋だけをテーマに料理してりゃあそこそこの秀作になったのでは、と思えるだけに残念。