アメリカ 2012
監督、脚本 ロブ・ゾンビ

魔女狩りで有名なマサチューセッツ州セイラムを舞台に、およそ三世紀を経て蘇る魔女の呪いを描いたホラー。
主演はおなじみロブ・ゾンビ監督の嫁、シェリ・ムーン・ゾンビ。
すでに監督デビュー作から数えて通算5作目ですが、毎回必ず出てますね、嫁。
伊丹十三と宮本信子の関係みたいなものか。
いささか例えが古いか、すまぬ。
で、肝心の内容なんですが、お得意のサイケデリックな色使いや、ノイジーな劇伴等、らしさは充分に発揮しているものの、さすがにそれだけでは超えられぬ壁に監督も直面したかな、というのが正直なところでしょうかね。
ロブってね、熱烈なホラーファンが趣味の高じるあまり、そのまま作り手になってしまったような人だと思うんですよ。
なのでほとんど悪魔のいけにえ(1974)のリブート版みたいな感じだったマーダー・ライド・ショー(2003)やリメイクであるハロウィン(2007)はまだ上手に乗りこなすことができた。
土台となる物語の基礎があらかじめ存在してたわけですから。
言うなれば、上モノをどうするかだけを考えりゃいいんですし。
けれど、今回のようにゼロからオリジナルの物語を組み上げる、となると、どうしたって目新しさや独自性が要求されるわけで。
やっぱりね、今どき魔女伝説を題材にして、その呪いを主題とするにあたってセーラムをチョイスする、って時点でありきたりですよね。
スティーブン・キングの死霊伝説セーラムズロット(1979)は言うに及ばず、似たような既出の作品はあちこちに転がってるわけですから。
しかも呪いの文言の秘められたレコードが小道具とか、何年前のネタなんだ、って話であって。
作劇もあんまりよろしくない。
魔女に対抗する勢力があってこそストーリーは盛り上がるんであって、はい、呪われました、防ぎようがないです、だけじゃあね、見てる側は、へえ、そうですか、と返すしかなくて。
スリル不在なんですよね。
私の勝手な想像ですが、多分ロブはオーメン(1976)のような「抗いがたい絶対悪の狂気」みたいなものを演出したかったんだろう、と思うんです。
でもそれを一側面だけから捉えても恐怖は伝わってこない。
メソッドは出来上がってます。
けれど、肝心のストーリーテリングに、見合うだけの発想、工夫がない。
あと、嫁のシェリですけど、そろそろ決別したほうがいいような気も私はしました。
ぶっちゃけ、あんまり演技巧者でもないんですよね、この人。
特に今回のような役どころは、彼女のキャパを完全に超えてるな、と思わせるデク人形ぶりが目立ちましたし。
次作が勝負でしょうね。
ファン気質を超えて、本物のクリエイターになれるかどうかの岐路にさしかかってるのでは・・と私は思いましたね。