1997年初出 遠藤浩輝
講談社アフタヌーンKC 全18巻

致死性の高いウイルスの大流行にさらされ、帝国主義的な社会に変貌を遂げた近未来を描くSF大作。
黄金期のアフタヌーンを支えた一作と言ってもいいでしょうね。
当時、第一話を読んで「こりゃちょっとすごい新人が出てきた」と唸らされた記憶があります。
決してこれまでになかったSFというわけではないとは思うんですが、小うるさいファンをも黙らせる画力と作劇の確かさがあったというか。
終末をノスタルジックに彩る演出力、感性に酔わされたのは間違いない。
ただね、私の場合、それも1巻までの話でして。
好みの問題なのかもしれませんが、巻が進めば進むほど、思ってた方向に物語が進んでくれなくなってしまうんですよね。
特に中盤、5~7巻ぐらいまでの進行なんて、これ近未来でやるべき話か?ってなほど血なまぐさいマフィアものになっちゃってて。
正直、2~10巻ぐらいまですっ飛ばしてもよかったんじゃないか?と後から思ったぐらい。
世界を軸とした大きなテーマがね、割とうすぼんやりしてるんです。
主人公であるエリアの生き様そのものを描きたかったのかもしれませんが、どこか物語の背景と釣り合いがとれてないように感じるんですよね。
悪くいうなら散漫で拡散的。
最終的にはそれなりの着地点が見い出されるんですけど、なんだか回り道がすぎやしないか?みたいな。
後から調べてみたら、本来は1話のみの短編として発表された作品だったようです。
編集部の意向で長期連載化したとか。
納得。
決して完成度の低い作品というわけではないとは思うんですが、作者の力量を考えるならあえてブラッシュアップする選択もあったように思いますね。
10巻ぐらいにまとめてればもっと評価は高まったような気がします。
決して嫌いじゃないし、どっちかといえば好きなタイプの漫画なんですが、なんとなくスッキリしない、もやもやした感触が残る、私にとってはそういう一作ですね。