ある決闘 ーセントヘレナの掟ー

アメリカ 2016
監督 キーラン・ダーシー=スミス
脚本 マット・クック

ある決闘 ーセントヘレナの掟ー

メキシコとの国境線近くの河に流れ着く死体の謎を追って、ある町に潜入捜査するよう命じられたテキサス・レンジャーを描く西部劇。

私はあんまり西部劇に詳しくないんで断言できないんですが、テキサス・レンジャーが身分を偽って見知らぬ街に潜り込む設定ってなかなか珍しいのでは?と思うんです。

当時の風俗や文化をよく知らないんで、どこまで史実に忠実なのかわからなんですが、普通に「刑事もの」を見てるような感覚で楽しめたことは確か。

特徴的だったのはレンジャーが潜入捜査だと言うのに嫁をつれて見知らぬ街にやってきたことですかね。

いやいやいやいや、仕事でしょ?しかも危険を伴う?嫁は家においてきなさいよ!と思わずつっこんでしまったりもしたんですが、こういうことをひょいと出来てしまうのが西部劇ならではの制約のなさか。

また嫁がね、おとなしそうに見えてなかなか強情なやつなんです。

仕事なんだからダメ、と主人公は言い聞かせるんですが、嫁ね「あなたが帰ってきたときに私はもう居ないかもしれない」とか言って脅すんですな。

だからといって連れて行く方も連れて行く方なわけですけど。

しかしながらこの無茶な展開が、後々になって物語を大きく動かす伏線となっていたりもするんでなかなか侮れない。

嫁は見知らぬ町で何を見て、何に気持ちを動かされたのか、それが最終的には主人公を四面楚歌な状況へと追いやることとなります。

これには素直に「そうきたか!」と唸らされた。

ぶっちゃけシナリオにさほど意外性はありません。

悪い意味で現代劇に転換できてしまう「ゆるさ」は否めない、といったところ。

けれど上述したように嫁というキャラを上手に泳がしてるんで、思いのほか緊張感が途切れないんですね。

丁々発止のやりとりを演出するセリフ回しのセンスも悪くない。

ウディ・ハレルソンの怪演にぐいぐい引っ張られた部分も大きい。

唯一残念だったのはエンディングにおける決着のつけかたですかね。

見てもらえればわかると思うんですが「動けないと思ってた」はないだろうと。

そりゃない、いくらなんでもそれはダメ。

普通は監禁か、拘束するだろうがよ!どこまで間抜けな部下を揃えてるんだよ!と思わずあたしゃ声に出してしまった。

そのおかげでせっかくのクライマックも台無し。

逃したメキシコ人が予想どおりの動きをしたことにも、やっぱり・・・、と興ざめ。

終盤までは悪くなかったんですが、肝心の締めでいささかつまづいた印象ですね。

もっとカタルシスを感じられるラストシーンにできたはずなのになあ、と思えた点がマイナス材料か。

あと少し、といったところでしょうか。

作劇のうまさは感じられたんですが、そのうちに忘れてしまいそうな気もするなあ、というのが正直な感想ですかね。

良いところはたくさんあったんで、次作に期待、ですね。

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