フランス 2016
監督 ポール・バーホーベン
原作 フィリップ・ディジャン
タイトルがひっこむや否や主人公であるミシェルが暴漢に押し倒され、陵辱されるシーンでいきなり物語の幕が切って落とされ度肝を抜かれます。
ミシェルを演じるのは御年65歳のイザベル・ユペール。
フランスの至宝、と言われる大女優なわけですが、もはや老境の域に達しつつあるベテランにこんな役柄をふる、ってのはどうなんだ?と目が点。
多分、作中の主人公ミシェルは40~50代ぐらいの設定だと思うんですね。
そりゃイザベル・ユペール、65歳とは思えぬ美貌ですよ、でもね、やっぱりどうしたって無理があると思うんですよ、私は。
至極シンプルに、見たくないですよね、やっぱり。
早い話が悪趣味。
何を訴えかけたいんだ、とマジで考え込んでしまう。
それこそがポール・バーホーベンらしい、といえばそうなのかもしれませんけどね。
ストーリーの進行も、まともな感覚からしたら理解不能としか言いようのない作劇の連続。
はっきりいって、ミシェル、人格が破綻してます。
医者でもカウンセラーでもなんでもいいんですけど、精神鑑定されたら確実に投薬を進められるレベル。
つまるところ「こんな女はいねえ」という違和感が終始ついて回るんですよね。
ミシェルの価値観に、正当性なり、もっともらしさを投影しようと、その半生や周囲の状況を緻密に作り込んでるのはわかるんですよ。
ひょっとしたら圧倒的にシングル・マザーの多いフランスの世相を反映してるのかもな、と思ったりもした。
性倒錯そのものを描こうとしてるのかも、とちらりと考えたり。
でもね、やっぱり変。
暴力への忌避感なり怯えなりが主人公から欠落しちゃってるんですよね。
あえてすべてを「そういうものだ」と受け入れたとしてもですよ、見終わって感じるのは、だからなんなんだ、の当惑の感情でしかない。
私の中に、ミシェルの生き方に対して感銘を受けたり、驚きを感じる感覚はないですね。
病んでるなあ、としか言いようがない。
しかしこれがフランスでは14万部のベストセラーかあ・・・・。
主人公の背徳であったり、奇異な振る舞いに恐怖するスリラー、と解釈してもいいのかもしれませんけどね、うーん、私はついていけないですね。
一部で熱狂的に支持されてるみたいですが、私は蚊帳の外で全然かまいません、というのが本音ですかね。