2002年初出 小田扉
太田出版
架空の街、江豆町に暮らす人達の奇妙な風俗や生活習慣を描いた虚構SF。
やりたかったことはわかります。
ギャグの文脈で仮想現実っぽいことをやらかして、それをシュールな笑いに変えたかったんでしょうけど、まあ、こういうのってやっぱりなかなか難しいと思うんですよね。
まず、江豆町という世界そのものを緻密に作り上げる必要がありますから。
ドリームバリューの話とか、サダメアゲハの話とか、いい線いってるとは思うんですが、土台にあるものが明確じゃないから全部が別個の短編のように感じられて。
アイディアと奇抜な発想だけで勝負するのはいいんですけど、それが全体の統一感を損ねてるのは間違いない。
いっそのこと江豆町という冠を外したほうが虚構性が際立ってよかったんじゃあ、と思うんですが今更ですね。
読んでて、どこか90年代の山上たつひこに通ずるトリップ感を感じたりもしたんですが、どこか未消化気味、というのが正直なところ。
ただ、こういうアプローチは嫌いじゃないです。
この手の「少しだけ現実から逸脱した想像力」はのちの作品、フィッシュパークなかおちとかで活かされてるようにも思います。
ファンなら手探りな感じが楽しめるかもしれません。