ありがとう、トニ・エルドマン

ドイツ/オーストリア 2016
監督、脚本 マーレン・アデ

ありがとう、トニ・エルドマン

仕事一筋のキャリアウーマンを娘に持つ父親の、不器用な愛情表現をコミカルに描いた人間ドラマ。

まあ、長いです。

なんせ162分。

正直、2時間超えたあたりで、これ、ちゃんとオチがあるのか?と不安になってくるぐらい長い。

というのも、ストーリーそのものに大きな山場もなければ驚きの展開が待ち受けてるわけでもないからなんですが、そもそもがそういう映画だからさ、と言われてしまえば納得するしかないのも確かでして。

手持ちカメラで撮影された単調なカメラワークも長さを意識させるのに一役買ってる。

また監督、こりゃ必要ないだろ、と思えるシーンをやたらふんだんに盛り込んでくるんですよね。

それを一言でいうなら「間」。

なんだかわかんないんですけど、やたら間にこだわるんです、監督。

一切のセリフなしで、無意味に親父と娘がぎこちなさそうにしてるシーンが余裕で5分、とかザラ。

でもそれが不思議な味になってることは認めざるをえない。

語らぬ情感の演出としては巧みだったかも、と思わなくもない。

仕事以外に心を砕く余裕のない娘をなんとか振り向かせようと、ヅラと入れ歯で別人だと言い張り、娘の周辺に出没する親父の奇行は見てるだけで笑えるんですが、本人、なにかを積極的に語ろうとするわけではないんで、ドラマとしての説得力が見続けることによって増していかない、ってのがまずあって。

それが集中力を乱れさせがちだったりはするんです。

ただ、瞬発的な見せ場がいくつかあるのも無視できなかったりはして。

全裸パーティーとか、娘が親父のピアノで歌う場面とか、公園での着ぐるみとの抱擁シーンとか。

ラストシーンも実に奇妙な余韻を残します。

終わってみれば、なんだったんだろうこの映画・・・と思いつつも、多分忘れないだろうな、と確信する自分が居たりする。

まるで感動巨編じゃありません。

そこを間違えると大きなしっぺ返しをくらうことは明白。

でもなんか奇妙に記憶に残る。

不自然な作り込み、過剰な演出を排除して、無駄を無駄と考えず、すべてをフィルムに焼き付けようとしたらこうなるのかもな、と思ったりはしました。

好き嫌いは別れるかもしれませんが、これも作家性、という気はしましたね。

うん、嫌いじゃないです。

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