特捜部Q 檻の中の女

デンマーク 2013
監督 ミケル・ノルゴート
原作 ユッシ・エーズラ・オールスン

特捜部Q 檻の中の女

2007年に発表されて以降、シリーズ化されるほど人気を博したベストセラーの映画化。

もう、結果から先に書いてしまいますが、やたら面白いです、この作品。

ぶっちゃけね、格別目新しいことは何もやってないと思うんですよ。

それは間違いない。

意固地ではみ出し者な刑事が、ある事件をきっかけに未解決事件の資料整理室に左遷されて、意に沿わぬ相手とチームを組むことになる、という序盤の流れは、いかにもどこかで見たような、日本のドラマで言うなら堤幸彦の「ケイゾク」のような、いやいやケイゾクを持ち出すまでもなく鉄板だろこの手のパターンは、とも思いますし、上司の制止を無視して勝手に捜査を進めていくシナリオ展開も馴染みがありすぎてもはや食傷と言っていい。

なのに面白い。

暴走する頑固野郎な主人公と、いつも沈着冷静で穏やかなアラブ系の相棒、という取り合わせがちょっと珍しいかな、とは思ったんですが、それだけではこの面白さを説明しきれない。

事件そのものの仕立てが実によく出来てて、謎解きにスリルが加味されている、というのがミステリファンの心理をくすぐるのは確か。

加圧室なんてシロモノを持ち出してくるのか!と唸らされましたね、私は。

けれど、それがこの作品の最大の魅力、ってわけでもない。

見終わってね、妙に特捜部Qのコンビに肩入れしてる自分が居るんですよね。

カールとアサドの活躍をもっと見たい、カールの私生活がどうなっていくのか知りたい、アサドの半生なんかも描いてほしい、みたいな。

正直、なんでこんなにのめり込んでるんだ?私は?と自分でもよくわからないし、うまく説明できないんですが、優れた物語の持つ磁力みたいなものに、久々に触れた気はしましたね。

はっきりとした結論は出せないんですが、すでに形骸化しているような王道のはみ出し刑事物であってすら、事件そのもの及びそれを追う人間を丁寧に描けば、充分現代でも通用するものとして成立する、ということなのかもしれません。

北欧ならではの寒々しく陰りを帯びたトーンも良。

セリフで全部説明するんじゃなく、映像で語ろうとする姿勢も好み。

良質なサスペンスであり、広く万人におすすめできる一作だと思います。

あと余談なんですが、なんでQ?

日本でQというとどうしてもウルトラQとか、オバケのQ太郎とか、あんまりかっこいいイメージはないような気がするんですが、損してるように思うのは私がオッサンだからでしょうか、いや、失礼。

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