2004年発出 石川雅之
講談社イブニングKC 1~10巻(全13巻)

アニメやテレビドラマにもなったメジャーな作品ですが、実はそれほど熱心に読んではいない、というのが正直なところだったりします。
やっぱりね、どこか「うんちくもの」になっちゃってるように私は思うんですね。
それが悪い、ってわけではないです。
うんちくものにはうんちくものなりの発見や驚きがありますし、知的好奇心を満足させるにはうってつけなんでしょうが、私はそういうのは学術書とまでは言わないものの、せめて新書、活字で読みたいんですよね。
漫画という表現形態でうんちくかまそうと思うと、どうしたって説明臭くなるし、セリフも膨大な量になる。
それがリズムやテンポを崩す、と私は感じてて。
漫画には漫画でしか出来ないことが他にもっとたくさんあるだろう、と。
実際、本作も腐敗菌→酒とテーマが変わっていくにつれ、物語そのものよりも業界や消費者に対する問題提議みたいな部分が重要視される傾向が進んだように思いましたし。
それが証拠に「菌が肉眼で見える青年」という最高にいじりがいのある設定が中盤以降全く活かされてませんしね。
農大の学園生活を描くことが本筋なのか、それとも事実を誤認してる世の中に一言物申したいのか、どっちつかずになっちゃってる。
ただ、作者の漫画家としての高い力量が、始終ふらふらしてるストーリーをそれなりに読ませるものに仕上げていることは確か。
もう醤油の話とかいいから、と思っていてもサクサク読めてしまうんですよね。
まあ、それも私の場合10巻までが限度でしたが。
物語を編むことに照準をあわせた新作を、と乞うばかりですね。
こういうのは弘兼憲史とか三田紀房にまかせておきゃあいいんです。
才能ある漫画家だと思うんで、方向性を修正して別路線を模索してほしい、と願うばかりですね。