ベルギー/フランス 2016
監督、脚本 ダルデンヌ兄弟
診療時間外の訪問者に居留守を使った女性医師の後悔を描いた作品。
なんで後悔してるのか、というと、その訪問者がその後殺害されちゃったから。
「あの時、私が扉を開けていればあの娘は死を免れたのに・・・」って訳です。
娘が身元不明であることを不憫に思い、自ら娘の正体を探ろうと、主人公は警察を差し置いてあちこちに探りをいれ出すんですが、それがサスペンスフルな展開につながっていくのか、というとそうでもなく、むしろ医師本人の人間性、内面を掘り下げていくことが事件そのものより大事にされてるのが特徴的ですね。
医師としてどうあるべきか、患者とどう向き合うべきなのか、それが事件を通して照らし出されていく感じ。
ドラマ性は高いです。
街の診療所を独身女性が独りで切り盛りすることの大変さ、苦悩はしっかり伝わってくる。
ただ、純粋にサスペンスとして見るなら、あれ?なんか思ってたのと違う、ってのはあるかもしれません。
それなりのオチは用意されてます。
お前だったのかよ!という驚きも少なからずあった。
でもやっぱり、エンディングに至るまでの枝葉末節がスリルを演出する上でまどろっこしいし、まわりくどいんですよね。
いや、それこそがこの映画の主題であり、本分である、ってのはわかるんですが、もう少しドラマと事件の双方が引き立てあうやり方はなかったものか、と私なんかは思ってしまう。
とにかくテンションが上がらないんですよね。
主演のアデル・エネルの抑えた演技のせいもあるんでしょうが、監督自身が派手に観客の好奇心を煽ろうとしていない、というのも大きいでしょう。
これは手持ちカメラにこだわるダルデンヌ兄弟の撮影手法も影響してるのかもしれません。
ドキュメンタリー風といえばそうなのかもしれませんが、どうしたって「ただそこにあるものを映しているだけ」みたいな単調さはにじみ出てくる。
手持ちカメラの映像が嫌い、という私自身の好みもあるかとは思うんですけどね。
ひとつひとつのエピソードに注目するならシナリオはよく練られてる、と思うんですが、それをどう映像にするか、という点において私とは合わないものがあった、というのが結局のところ正解かも。
面白いのに見てて眠くなってくるって、どうなんだ?と。
これを損してる、なんて言っちゃあいかんのでしょうけど、なにかと好事家向き、というのが本音ですかね。