オーストラリア 2016
監督、脚本 ニコラス・ヴェルソ

ハロウィンの夜に起きた奇妙な出来事を描いたダーク・ファンタジー、と喧伝されてますが、別段ファンタジーってほどでもないんじゃないの?というのが正直なところ。
せいぜい「奇談」程度ですね。
この世あらざる世界に紛れ込むわけでもないですし。
そもそも原題はBOYS IN THE TREESですんで、特にハロウィンがどうこうするわけでもない。
あくまでハロウィンは舞台装置。
描かれているのは小学生の頃は仲良しだったのに、高校生となった今ではいじめっ子グループの1人といじめられっ子、という立場に変わってしまった2人の少年の偶然な邂逅。
夜を通して、過去を探るように街を徘徊する元友人同士の会話劇が物語の主軸。
で、やっぱりちょっとしんどいなあ、と思うのは、肝心の会話劇がね、さっぱり面白くないこと。
寓話を挿入してみたりと工夫の跡は伺えるんですけど、情感に訴えかけてくるものがないんですよね。
見ててだんだんイライラしてくる。
もったいぶった言い回しはもういいからさっさと核心に迫れよ、みたいな。
思い切って非現実を派手に演出してくれてたらまた感触も違ったんでしょうけど、ただダラダラと思い出話の延長なんですよね。
なぜ今は距離ができてしまった2人がこうして奇妙な道行きを共にしているのか、そこに説得力がない。
あと、結構早い段階でオチがわかってしまった、というのもあって。
終わってみれば、ああやっぱり、で脱力。
まあ、テーマそのものは悪くなかった、と思うんです。
子供時代に捨ててきたものをもう一度振り返ることで、主人公は何を「気づき」としたのか、それを故郷から巣立とうとしている日のお話としたことは上手いと思いましたし。
救われないエンディングの感傷的な演出も、想像どうりだったとはいえ、予想外にいい出来だった。
結局、ラストまでどう物語を紡いでいくのか、作劇のテクニックの問題でしょうね。
センスは悪くない、と思うんで、将来的にはそこそこのものを撮るかもしれんな、と少し思いました。
ちょっとスベリ気味の青春群像劇。
なんとなくドニー・ダーコに似てる雰囲気もあり。