アメリカ 2012
監督、脚本 ジェフ・ニコルズ

少年二人組と、川の中州に浮かぶ無人島に隠れ住む謎の男との奇妙な交流を描いた作品。
やっぱりジェフ・ニコルズって人は優れたストーリー・テラーだなあ、とつくづく思いましたね。
まあ、定形でパターン、と言えばそうかもしれません。
訳ありな男と、男に興味津々な少年のドラマって、これまであまたの作品で使いまわされてきた設定ですしね。
ああ、ろくなことにならないんだろうなあ、というのもなんとなく予想がつく。
なのに、ニコルズはそんな既視感すらものともせず、最後まで退屈させることなく見せきってしまう。
登場人物たちのキャラ作りが達者、というのもあるんですけどね、キャラクターの背景を丁寧に紡ぐことに余念がなかったのがやはり素晴らしかったですね。
彼らを彼らたらしめているのは何で、どうして彼らは現状こうなってるのか、その内実が、描き分けられたいくつもの断片からするすると浮かび上がってくるんです。
結果それが説得力につながってるし、物語の密度を濃くしてる。
ただ妙なシチュエーションが男と少年を仲良しにした、じゃないんです。
少年はなにを欲していて、彼は男に何を見ていたのか、表面的なやりとりの裏側にあるものが自然と伝わってくる仕掛けになってる。
謎の男に対して懐疑的なもう一人の少年をパートナーとしたことも上手い。
これは少年の真向かいに住む軍人上がりのじいさんの存在も同様で。
対比がフラットな目線を失わせないんですよね。
変に美化してないんで、物語の手綱さばきが一切ブレないんです。
きちんと全体を俯瞰できてなきゃなかなかこうはならない。
終盤の展開はちょっとやりすぎかな、と思わなくもなかったんですが、そこへ至るまでに積み上げられたものが豊潤だったんでね、なんか許せてしまいましたね。
愛するということの不器用さを、少年の成長物語に照らして添わせた秀作だと思います。
余談ですがラストシーン、これから新たな冒険が始まるかのようで、ちょっと笑ってしまった。
私にとっては記憶に残る一作でしたね。