2008年初出 伊藤潤二
講談社ワイドKC

いわゆる猫マンガは一定のファンがついているから、誰であれある程度の数字は予測できる固いジャンルかと思うんですが、まさか伊藤潤二がこの分野に参入してくるとは夢にも思わなかったですね。
講談社の編集は目の付け所が凄いというか、とんでもないというか。
まあ当然普通の猫マンガになるはずもなく。
おもしろいな、と思ったのは作者の視線が猫好きのそれでなく、猫好きの奥様に巻き込まれた形で「状況を俯瞰している」風なこと。
予想外の乱入者としての猫と自身がどう接していくのか、筆者の心境の変化が綴られているのが面白い。
何と言っても笑えるのはいつものホラータッチな絵柄のまま猫を描いていること。
特に「よん」の描かれ方なんて、作中で口述されているようにまさに呪い猫。
猫マンガで怖がらせてどうする。
自分の嫁を白目の女にキャラ化する感覚もさすが。
あとで怒られたりしなかったんでしょうか。
玩具的に猫を愛でる一部の猫マニアからは反感を買うかも知れませんが、個人的にはこんなに爆笑した猫エッセイマンガは初めてですね。
さすがは伊藤潤二。
新境地開拓か。
ホラーギャグ風猫エッセイに需要があるのかどうかはわからんけれども。