2004年初出 伊藤潤二
朝日ソノラマ眠れぬ夜の奇妙な話コミックス
<収録短編>
双一前線
双一の愛玩動物
合鏡谷にて
幽霊になりたくない
蔵書幻影
闇の絶唱
潰談
独特のアイディアが光るのは「幽霊になりたくない」「潰談」の2篇。
前者は、霊が見える、というありふれたネタからあらぬ方向への跳躍ぶりが素晴らしい。
あえて、そのものを描かない、としたことがヒロインの異常性を際立たせててお見事の一言。
よくまあこんなシーンを思いつくな、と笑ってしまいそうになる一コマもあり、さすがとしか言いようがない。
後者はほとんどSFなんじゃないか、と思ったりもするんですが、ばかばかしいグロさがいかにも伊藤潤二な紙一重感を醸していて小気味いい。
オチのあっけなさなんて、いささか語弊があるかもしれませんが小粋という言葉が浮かんだほど。
1話目と2話目に収録されてる双一シリーズは、未来編の続きと、おなじみ子供時代を描いたもの。
未来編の続きは禁じ手使ってて落胆。
2話目はいつものパターンながら怪猫の存在がばかばかしくて悪くはない。
「合鏡谷にて」「闇の絶唱」は筋運びに無理がありすぎて消化不良気味。
表題作と「幽霊になりたくない」のためだけに購入をおすすめしていいものか、悩むところですが、ちょっと他所ではお目にかかれないぞ、これは、と思える2篇だけに難しいところですね。