2002年初出 伊藤潤二
朝日ソノラマ眠れぬ夜の奇妙な話コミックス

<収録短編>
血をすする闇
ゴールデンタイムの幽霊
轟音
お化け屋敷の謎
グリセリド
地縛者
死刑囚の呼び鈴
やはり突出しているのは「グリセリド」か。
焼肉屋と油で、よくもまあこんな話が思いつくものだと思います。
大抵のホラーには免疫のある私のようなオッサンですら、生理的な嫌悪感で震えあがるワンシーンがあるのも特筆に値するかと。
「お化け屋敷の謎」は双一シリーズの未来編。
あの双一があの人と結婚してる、という設定にも度肝をぬかれますが、ホラーギャグなりに救いのない忌まわしさがあって割と好感触。
双一の子供時代を描いた従来のシリーズより私はこっちの方が好きかも。
「地縛者」はどこか筒井さんの『佇む人』に似た質感のある一作。
オチがよく出来てて、これ、テレビドラマ化できるんじゃないか、と思ったほど。
反してやや凡庸に思えたのが「轟音」「死刑囚の呼び鈴」。
こりゃ伊藤潤二の仕事じゃねえな、とちょっと感じたり。
手のつけられない面白さだった頃を過ぎて、やや落ち着いてきた印象も。
とはいえ、打率は5割以上をキープしてると思うので、まだまだ油断はならない、といったところでしょうか。
「血をすする闇」のような、幻覚的風景をラストでさらっと絵にしてしまうセンスはやっぱり変わらず頭抜けてると思いましたね。