
商業デビュー作ではないんですが手塚先生が中学生の頃から温めていて私家本も作っていたという最初期の長編です。
作画とかコマ割りとかとても全盛期の先生には似ても似つかぬ有様でほとんど別人と言っていいと思うんですが、なんせ昭和23年発行のマンガですから。
そりゃもうしかたがない。
終戦直後ですよ。
逆に終戦直後によくぞここまで、と、私は思いました。
正直何もかもが前時代的ではあるんです。
それでも私が驚かされたのは見事に「SF」である、ということ。
特にエンディング、異星にとりのこされた敷島博士のセリフは当時にしては衝撃的だったと思います。
しかもパートナーは植物型人間。
人じゃなんですよ。
いやこれ何事か、って。
あちこち手を加えてやれば立派に現在でも通用するストーリーだと思います。
といいいますかね、20代前半で、規範とするものもなく手探りで、これだけのものを描きあげた先生は間違いなく早熟の天才だ、と私は思いました。
当時で40万部を売り上げた大ヒット作だったらしいんですが、子供の頃にこんなものを読まされた日にゃあそりゃ人生も変わる。
現在の審美眼で量るのは何かと難しいものはあるとは思いますが、でもやはりこれは漫画史にくさびを打ち込む傑作だと思います。
ここを基点にして日本独特の漫画なり、アニメなりのSF文化が花開いていったんだと私は思います。
ちなみにコナンドイルのロストワールドとは無関係です。