アメリカ 2017
監督 ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
脚本 ダン・ギルロイ、マックス・ボレンスタイン
「空想娯楽活劇」といった風な、ちょっぴり古臭い言い回しがピッタリと当てはまる映画だな、と思いましたね。
嵐に遮られた人跡未踏の島にヘリで乗り込む展開といい、巨大な怪物が跋扈する中での決死のサバイバル行といい、なんだこれオリジナル作品が存在するのか?と錯覚してしまいそうなほどあの時代の空気をまとってる。
そこはあえて意識したんでしょうね。
で、それが意外にも21世紀においてすら充分魅力的な題材となりうる、というのは個人的に発見ではありました。
なんといっても特筆すべきはデティールにこだわった映像だと思います。
冒頭、議員の事務所をモナークのメンバーが訪れるシーン、あまりにも見事に70年代前半のアメリカが再現されてて舌を巻きました。
登場人物の髪型や風貌、台詞回しにまでこだわった一連のシークエンスは、すでにどこかに保管されてたフィルムをデジタル修正して使ってるんじゃないか?と思ったほど。
そりゃ当時、この手の怪獣映画を必死で見た人間はこんなの見せつけられちゃあ嫌が応にも盛り上がりますよ。
あの時の興奮をまた味あわせてくれるのか?!ってなもの。
コングが大暴れするシーンの細かい演出も堂に入ってた。
ヘリの侵入にかぶせるように一匹のトンボがすいっと枝にとまるカットや、コングに喰らわれる寸前に人がハンバーガーを食らう場面に切り替わるカット等、単にCG頼りな派手さにのみ依存してるわけじゃないんですよね。
髑髏島と巨大生物をどうミステリアスに、超自然の象徴として見せるか、きちんと考えて撮られてる。
映像を追ってるだけで楽しい、というのは確実にありましたね。
残念だったのは、これだけの映像をまとめ上げる力量があるのに、シナリオが箸にも棒にもひっかからない退屈さだったこと。
もうね、島に着きました、3日ほどうろうろして脱出しました、以上、なんですよ。
総勢10人以上の登場人物を用意しておきながら、この緊張感のなさは一体何事か、ってなぐらいスリル不在。
互いにもめるわけでなし、利害が衝突するわけでなし、友情が芽生えるわけでなし。
恋に発展するわけでもなければ、人生観を変えるような出来事に遭遇するわけでもない。
誰ひとりとしてキャラが立ってないのには呆れるのを通り越して呆然としましたね。
主人公の傭兵なんてもう完全にデク人形ですし。
居ても居なくても全然問題ない。
またサミュエル演じる大佐が中途半端に独善的という吹っ切れなさで。
お前が腹黒い悪役演じなくてどうするんだ、という。
そこが徹底されてないから、最後の大佐の行動なんて単なるバカにしかみえない有様で。
ここまで登場人物達の人間関係がまっさらな映画は久しぶりに見た、って感じでしたね。
誰も、誰とも深く絡まないんですよ。
SNS上でのお付き合いかよ!と私は思わずつっこんだほど。
結局、怪物同士のド迫力な激突と、一方的に捕食される人間を描いただけで終わってしまった印象ですね。
もう本当に何も残らないんだけど、コングはとりあえずでかくて凄かった、そんな映画ですね。
次作ではゴジラと一戦やらかすみたいですけど、次はもう少しドラマを。
映像センスは悪くないんだから欠けてるものがなんだったのか、きちんと検証してほしいと思う次第。
同じことを2度やっても二匹目のドジョウは捕まえられんぞ、と性急ながら忠告しておきたいですね。