アメリカ 2015
監督 ディート・モンティエル
原案 アダム・G・サイモン

アフガニスタンの紛争地帯から復員した海兵隊員を待ち受ける、不可解で奇妙な現実をスリラータッチで描いた作品。
物語は、主人公ガブリエルが辿った現地派兵から帰国までの流れに挿入される形で、上官との長時間に渡る面談のシーン、帰国後に息子を探し惑うシーンが同時進行で展開していくんですが、これね、冒頭30分ぐらいは、何が起こってるのかさっぱりわからん、と言う人続出だったのではという気がします。
かくいう私もこりゃ一体なんの映画なんだ?となかなか理解がついていかなかった。
というのもですね、主人公、帰国後に誰もいない町で息子の消息を追ってふらふらさまよってたっぽいんですね。
絵ヅラ的にはほとんどSFの領域。
すべての人間がゾンビ化して廃墟と化した町に主人公とその相棒だけが存在する感じ、と言えば理解しやすいかもしれません。
なぜそんなことになってるのか、一切説明はありません。
あれこれ教えてくれそうな気配もまるでなし。
もうただただ映画の進行に身を委ねるしか打つ手なし。
おぼろげに物語が輪郭を帯びてくるのは、上官との一問一答が佳境にさしかかってきてからぐらいですかね。
どうも現地で戦闘中に、なにか不測の事態が起こったらしい、と観客は悟らされます。
でもまだそれと帰国後のカタストロフな追走劇が接点を持つことはない。
あれ、これはひょっとして・・・と私があれこれ予断を抱いたのは、戦闘中に何が起こったのか、はっきりとわかってからぐらいですかね。
そんなに自信があったわけじゃないんです。
でももしすべての現象にきちんと収拾つけるなら、もうこれしかないんじゃないか?と思って最後まで見たらまさに予想どうりで、なにやら軽く煮え湯を飲まされた気分になったりもして、どうにもこうにも。
いや、謎をたやすく暴かせないための構成力、作劇はしっかりしてた、と思うんです。
最後の最後であきらかになった真相も充分に衝撃的で、心乱されるものがありましたし。
ただ問題はですね、戦闘中に起こったことを含めて、なぜ主人公が廃墟に息子を探し回っていたのか、その隠された事実がありがちなオチだったことだと思うんですね。
正直私はベトナム戦争後に大量に作られた戦争映画でも見てるような気分になった。
なんというか、扱ってる題材がひどく70年代的なんですね。
それがダメだとか浅薄だとか言うつもりは毛頭ありません。
でも、ここから伝わるものが監督の意図にそぐう形で、なにかの抑止力なり、反戦のアイコンになるかというと、そこはやっぱり難しいように思うんです。
もしこれが単にエンターティメントなスリラーなら、及第点以上と私は評したことでしょう。
違いますしね、やっぱりこれどう解釈しても反戦映画ですし。
21世紀に訴えかけることのできる戦争映画じゃない、というのが私の結論。
この映画を見て受ける感銘が偽物だとはいいませんが、本作に手を出すのなら先にフルメタル・ジャケットやディア・ハンターを抑えておくべき、と思う次第。
あと個人的には、ソフト・フォーカス気味に暗色加工した映像がゲームっぽくってあまり好きになれませんでした。
小細工のまえに吟味せねばならんことが他にあったのでは、とちょっと思った。