アメリカ/フランス/デンマーク 2016
監督、原案 ニコラス・ウィンディング・レフン

モデルを夢見て一人都会にやってきた16歳の女の子が、トントン拍子に業界でのし上がっていく話なんですが、もーほんとこの映画、どう咀嚼すればいいのか、個人的にはお手上げでしたね。
最後まで見終わった今ですら、いったいこの作品は何を描こうとしていたのかさっぱりわからない状態で。
ありがちに、モデルとして成功することの難しさを描いた業界ものというわけでもないし、少女がいろんな障害にぶつかった末、大人に変わっていく成長物語というわけでもない。
かといって、モデルとして有名になることで生じる周囲との軋轢、恋人との関係の変化なんかを描いた人間ドラマ、というわけでもない。
もちろんサスペンスでもなけりゃホラーでもない。
ただ淡々と少女が成功していく様子を、監督お得意の不穏な演出、原色な色使いで追っていくだけ。
そもそも少女が何者なのかすらよくわからない。
観客に与えられている情報は、少女に両親が居ない、ということのみ。
そうかと思えば主人公が定宿にしているモーテルの管理人がなぜかキアヌ・リーブスだったりもして。
さして重要でもない端役に何故かキアヌというスターの無駄遣い。
なんなんだこれ?友情出演?映画の出来を危ぶんだプロデューサーのテコ入れ?と、いぶかしさ満開。
また終盤以降のシナリオ展開が、なぜそうなる?と理解に苦しむとんでもなさで。
前半の不可解なエピソードや伏線かと思われた挿話を全部投げ出して、あらぬ方向へショッキングに急旋回。
エンディングに至っては、ゴアなスプラッターか!と言いたくなるような脈絡の無さにもう匙を投げるしかない状態。
簡潔に言うなら、物語としての体をなしてないです。
前衛ってほどじゃないけど、ストーリーを心躍るものにするための手順、構築性がこの作品にはない。
非常に暗喩的、という評価もそりゃできるかとは思うんですよ。
でもそれって裏を返せば独りよがりなイマジネーションの貼り合わせでしかない、とも言えるわけで。
幻想文学的、で片付けるのが楽でいい感じですね。
とりあえずレフン節は集大成とばかりに炸裂してるんで、FEAR Xやオンリー・ゴッドあたりが好きな人にとっては待ってました、って感じかもしれませんが、問題は、今回もまたドライヴとはかけ離れた内容だ、ってことでしょうね。
多分監督はドライヴみたいな映画は別段撮りたい人なんじゃないんでしょうね。
彼のやりたいことって、広く賛同を得られることのないニッチでアート的なことなんでしょう。
で、私はそこにまるで共感できないし、感銘もうけない、ということが今作でよくわかった。
余談ですがレフン監督、女優さんをまるで無機物であるかのように撮るなあ、と思いました。
女性の出演者が大半なんで、普通ならどう魅力的に撮るかということに心を砕くだろうと思うんですが、なんだか彼の見せ方って、物言わぬドールをフレームにおさめてるような感じなんですね。
キレイはキレイなんですけど、そこに血が通ってないように見えるというか。
ひょっとしたらそのあたりに作品を読み解くヒントがあるのかもしれませんが、私は別にもういいかな、と。
私とは大きく感性に隔たりがある監督の作品、それが結論。
多分もう次は見ないでしょう。