マーダー・ライド・ショー2 デビルズ・リジェクト

アメリカ 2005
監督、脚本 ロブ・ゾンビ

マーダー・ライド・ショー2 デビルズ・リジェクト

いわゆるスラッシャームービーの続編というと、アイコンたる殺人鬼がさらに七面六臂な活躍を見せ、被害者倍増、血飛沫大サービスのスケールアップ版みたいな感じになることが多いかと思うんですが、意外にもロブ・ゾンビ、本作ではその裏をかいてきてます。

冒頭、いきなり警察の大規模な部隊に住処を囲まれるファイアフライ一家。

合図とともに問答無用な銃弾の雨が屋敷に穴を開けていく。

一人、また一人と倒れていくサイコキラーども。

命からがら屋敷を逃げ出したのは長男と長女のわずか2人だけ。

しかし警察は追撃の手を緩めることはない。

というのも、部隊の指揮をとるのが前作でファイアフライ一家に兄を惨殺された弟だからなんですね。

復讐に執念を燃やす弟が、手段を選ばず一家の生き残りを包囲していく大追跡劇が今作では描かれてるんです。

なんといっても、この手の映画においては絶対的強者である殺戮者が、逆に権力に追われてあたふたする絵ヅラが思いのほか斬新に感じられた、というのはありましたね。

因果応報をそのまま地で行く物語、といえばそれまでですが、悪行の報いが適用されないのがホラーというジャンルの作劇法であって。

そこを盲点とばかりにひっくりかえしてきた発想は、実にユニークだったと思います。

指揮官である弟を殺人鬼一家以上の狂気と憤怒で彩ったキャラクター作りも巧みだったんですが、私が特に感心したのは、あれだけ悪逆非道の限りをつくした連中が、見ているうちに段々かわいそうに思えてくる演出、筋立てでしょうか。

殺人鬼に同情って、どうかしてる、と自分でも思うんですが、そんな感情を抱かざるをえないほど一家に対する追い込みが熾烈を極めてるんですよね。

で、それは同時にロブ・ゾンビの周到な計算でもあったと思うんです。

特にラストシーン。

もうほとんどアメリカンニューシネマです。

なんだこの泣かせようとする画作りは、と唖然。

そこにあるのは、たとえ人の道からはずれ許されざる罪を犯した人間ですら、そのキャラクター性が突出していて印象操作に長けていれば、大衆心理は屈折した支持に傾く、だったと思うんです。

深読みのしすぎかもしれませんが、そう考えることがこの奇妙な復讐劇の落としどころを一番簡潔に説明できるように思えて仕方がない。

なぜホラーファンはフレディやジェイソンのような悪鬼どもをもてはやし、歓迎するのか。

その答えを見事はじき出してる一作であるようにも感じました。

前作から飛躍的な成長を遂げている、と思えた続編でしたね。

余計な小細工を一切せず、真っ向勝負を挑んできた姿勢もいい。

ロブ・ゾンビ、こりゃ本物だ、と唸らされました。

セオリーどおり、パターンを踏襲するだけのホラーに飽き飽きしてる人におすすめしたい1本ですね。

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