フランス 2015
監督、脚本 ミシェル・ゴンドリー

14歳の少年2人組が夏休みを利用して、お手製のオンボロ車で目的のない旅に出かけるお話。
ゴンドリー監督の自伝的作品らしいんですが、ほんとにこんなことやらかしたのかどうかはわかりません。
なんせ車は台座に50CCのモーターエンジンをつけただけの代物。
もちろんそんな素人細工が公道を走れるわけもなく、警察の目を欺くために廃材を利用してログハウス風に偽装。
見つかりそうになったらタイヤを隠して道端の小屋を装うわけですね。
いやそれ、絶対バレるだろ、と思わなくもないんですが、田園の続く田舎道をのろのろ車が走ってる映像を見てるとですね、あ、意外にバレないかも、なんて気にもなってくるんでなんとも不思議。
まあ、この手のトリッキーな目くらましは監督お得意のやり口だったりはするんですけど。
ただ今回、ゴンドリーは非現実的でシュールなお遊び的特殊撮影を一切やってません。
最初はエンジンの中に小人が居たり、車が空を飛んだりするのかな?などと穿った見方もしてたんですが、本作に限っては徹頭徹尾現実的。
それでもお手製の車が街を行く絵にさほど違和感を感じなかったんだから、監督、腕を上げた、ってことなんでしょうかね?わかりませんが。
特に何か大きな事件があるわけでもない、劇的な展開のある物語なわけでもないんですが、とても大人とは言い切れない少年達が無計画に思いつきだけで旅を続けていく姿は、なんだか妙に気持ちを揺さぶるものがありました。
やっぱりね、多くの人は自分の少年時代と彼ら二人を重ね合わせてしまうんじゃないか、と思うんですよ、私は。
義務教育という名のもとに嫌が応にも毎日学校へ通わなくてはならない閉塞感をほとんどの少年たちは打ち破れないまま、きっと大人になってることでしょうし。
私もそこはご多分に漏れず同じで。
親や教師の目の届かないところで、仲のいい友達と何にも縛られず自由な毎日を過ごしてみたい、そんな誰しもが思い描いたささやかな少年の夢を、この映画はいたずらっぽくも具体化してるんですよね。
しかも彼ら2人、学校ではどっちかというと浮き気味なんです。
本人たちにそんな自覚はなかったにせよ、自分たちの居場所を探す旅でもあるんですよね、これって。
特に何か着地点が用意されてるわけではありません。
ちょっとした出会いがあって、そして別れがあって。
終わってみれば、少し主人公は大人になっていたかも、というお決まりの結末は、類似する作品と比較してこの映画だけの突出した「なにか」があった、といえるほどではない。
でもなんか、いい。
ご都合主義的だったり、煮えきらなかったりはするんですけどね、小さなエピソードのひとつひとつが、あの頃の背伸びしていた自分をまばゆくも思い起こさせるんですよね。
良作だと思います。
私はなんか好きですね、この映画。