アメリカ 2000
監督、脚本 ガイ・リッチー
前作、ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズをすべてにおいてスケールアップさせたかのような秀作だと思います。
もう登場人物が多すぎて、誰の思惑がどこと利害衝突して何がどう転んでるのか把握するのが大変なんですが、それも一度腑に落ちると、あれよあれよと物語がよどみなく流れていくのが実感できる、ってんだからほんと大したもの。
ややこしく錯綜しているように見せかけて、実は余分な贅肉をあらかじめ全部そぎ落としてるんですよね、この作品。
まわりくどいことはしない。
必要最小限の見せるべき部分だけを追って、あとはそれをどうユーモアでふくらませるかに腐心。
これがおもしろくないわけがなくて。
この「余裕を感じさせるスピード感」はこの手の映画においてなかなか演出できないものだと思います。
編集が達者だったのかもしれませんけどね。
また、キャラ作りのうまさもさることながら、会話劇をどんなセリフで彩るのか、そのセンスも卓越してる、と思った。
いちいちニヤリとさせられるんですよね。
的を得た例えではないかもしれませんが、お笑いにおけるボケとツッコミの機能性、様式美をガイ・リッチーはよくわかってる、とうなずく私。
その上で軽妙洒脱なんだから、もう、ほんと手に負えない。
まあ、大風呂敷を広げた割にはあっけなく終わった、って言う人も中には居るかもしれませんが、私はこれはこれでいい、と思いますね。
もつれてたはずの糸がいつのまにか全部ほぐれて、やがてすっきりと1本のラインを結ぶ、そのプロセスを楽しむ映画だと思うんで。
実は主人公は犬、という見方もありかも。
2作目でこれだけやれたら文句なしでしょう。
ちなみに個人的にはもう少し若かりし日のベニチオ・デル・トロに活躍して欲しかったかも。
あと、ちょっと不思議だったのは、撃たれて血を流す死体とか、その手の血生臭いシーンがほとんど描写されてなかったこと。
それが難点、というわけではないんですが、なんだろR12とか、その手の規制を意識したんでしょうかね?
見て損はない一作だと思います。
練られたシナリオと綻びのない筋運びに感心させられる優れたクライム・コメディでしょう。