ポセイドン

アメリカ 2006
監督 ウォルフガング・ペーターゼン
原作 ポール・ギャリコ

ポセイドン

海洋パニックものの大傑作、ポセイドンアドベンチャー(72年)のリメイク。

よりにもよってポセイドンアドベンチャーか~、と思わず腕組み。

いやね、そりゃオリジナルは72年作なんで色々古びてきてるのは確かですが、それを勘定に入れたとしてもその素晴らしさはもうケチのつけようがないレベルにあるわけで。

名画ですよ、どこをどうひっくり返しても。

それをあえて焼きなおすって、相当な腕が必要だぞ、と。

ペーターゼン監督の実力を疑うわけではありませんが、さすがにこれは分が悪すぎるんじゃないかと。

そもそもリメイクの必要性があるのか、という点からしてかなり疑問なわけです。

あれはあれでもう完成しちゃってますから。

いかに話題性重視のハリウッドとはいえ、これは目の付け所がきわどすぎるんじゃないかと。

懸念は見事に的中しましたね。

多分、ペーターゼン監督は真正面から同じことをやっても勝負にならない、とでも思ったんじゃないでしょうか。

わかりませんが。

とりあえず監督がリメイクする上でなによりもこだわったのは、当時の最新SFXを駆使したスリルと臨場感への徹底した希求だったように思います。

まっさかさまになって海面に浮かぶ巨大豪華客船。

天と地がひっくりかえった船内で、なんとか外に出ようと上階に進む主人公一行の苦闘を命がけのフィールドアスレチックさながら、鉄砲水と爆炎と死体でショッキングに演出してみせた。

これは素直に、オリジナル以上の手に汗握る緊迫感があった、と賞賛されてしかるべきだと思います。

ああっ、危ないって、やばいやばいもう死ぬ、こりゃ誰か死ぬ、溺れるから、燃えてるから、と始終脇の下は汗でじっとり。

98分、一切弛緩することなし。

特に主要登場人物の一人が溺れ死ぬシーンは、あまりにもがき苦しむシーンがリアルすぎて、二度と海には行かない、と私に固く誓わせたほど。

これをつまらなかった、というのは相当なへそ曲りだと思います。

ただですね、それら熱意をかたむけたであろう脱出行の緻密な描写とは裏腹に、危地を共にする人間達のドラマがごっそり抜け落ちてしまった、というのも偽らざる真実。

そりゃもう欠落してる、っていっていいほど薄っぺらい。

やっぱり、片手落ち、と言わざるを得ないでしょうね。

06年の新しいポセイドンアドベンチャーを再構成するのでないのならどうするべきか、その答えがこれだったのだとしたら、潔くもあり薄甘くもある、と言うのが私の率直な感想。

面白くないわけじゃないんですが、あのUボートのペーターゼンが手がけた仕事、として評価するのはファンゆえ難しい。

何も考えずに見る分には最適か、と思うんですが、それは別に彼じゃなくてもできるだろ、と思えるのが悩ましいところ。

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