秘身譚

2010年初出 伊藤真美
講談社KCDX 1巻(以降続巻)

3世紀の古代ローマを舞台に、暗殺者たる半陰陽の少年とその保護者であるローマ軍士官が暗躍する、血と政争の歴史ファンタジー。

当時のローマ帝国における文化や世相を忠実に再現するために、膨大な資料でもって考察、検証を行ってることは数ページ読めばすぐわかります。

最近の漫画にしちゃあ恐ろしく密度が濃い。

その下調べの入念さに、作者の作品に対する思い入れがこれでもかと伝わってきます。

底が浅い上、貧弱な感性頼りの描き殴りな漫画に昨今辟易していた身としては、久しぶりに骨のある作品と出会った、って感じですね。

「ピルグリム・イェーガー」の頃に比べて技術や画力、表現力が格段に増していることも好感触。

単に歴史ものの枠に収まらず、人知を超えた超常の力が働いていることを匂わせる終盤の引きもいい。

なのに、です。

残念なことに掲載誌であるマガジンイーノが連載途中で休刊。

2巻発売が何度かアナウンスされるものの、2016年現在発刊されることはなし。

さすがにですね、これはいいかも、と思ってもですね、壮大な幕開けだけで評価を定める、ってのはやっぱり難しいわけです。

続けば凄い作品になりそうな予感はあるんですけどね、出版不況の真っ只中、わかりやすいカタルシスを得にくい作品ってのは一度発表の場を失うと、なかなか拾ってくれるところはないみたいで。

こういう作品こそ長い目で続けさせてあげなきゃいけない、と思うんですけどね。

それが衰退の一途をたどる漫画文化への抑止力にもなる気がするんですが・・・。

いつの日か再開されることを祈るばかりですね。

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