さんだらぼっち

1976年初版 石ノ森章太郎
小学館ビッグコミックス 1巻(全17巻)

遊郭でのツケを回収することを仕事とする、始末屋とんぼの活躍を描いた時代劇。

早い話が吉原から債権を買い取って、支払おうとしない借財人から現金を徴収する借金取りの話なわけですが、金にまつわるすさんだ人間関係やアコギなやりとりが痛々しくも赤裸々に描写、ってわけではなく、どうしたら払ってもらえるのか、知恵と工夫でなんとかしましょう、ってな人情噺的内容です。

そこはもう、いかにもな義と情の時代劇のテイスト。

要は「おめえさんには負けたよ、しかたねえ金は払ってやる」と相手に言わせるまでのプロセスを楽しむ漫画、と言っていいでしょうね。

また主人公のとんぼがすっとぼけた人物で。

馬耳東風、のれんに腕押しと言った風な飄々たる体ながら、突拍子もないアイディアで意固地になった借金主の心を溶かしたりする。

読んでてはまる人は見事にはまると思います。

借金取りながら、とんぼ本人はいたって無欲で、純心な性格、としたのもうまい、と思いましたね。

色と欲の世界のお話であるが故に、双方の対比が「なにを本当は一番大切にすべきか」を浮き彫りにするんです。

長期の連載、となったのも納得のシリーズですね。

ただですね、私個人的にはどこかね「浮浪雲」とかぶる質感があるなあ、と感じたりも。

浮浪雲の主人公、雲とキャラ設定に似通った部分を嗅ぎ取ってしまうからかもしれません。

あとは好みの問題で、小池一夫や平田弘史の時代劇を好んで愛読する身としては、やっぱりなにかと性善的で心優しすぎる、と思える点もちらほら。

おそらく私の嗜好が屈折して特殊なんでしょう、きっと。

広くオススメできる時代劇漫画であることは確かです。

余談ですが、さんだらぼっちとは、米俵の丸型な閉じ口のこと。

なぜそれがタイトルに冠してあるのか、よくわかりません。

コメント

  1. […] 作者の代表的な時代劇といえば佐武と市捕物控でありさんだらぼっちか、と思うんですが、個人的な好みでいうなら本作が一番よく出来てるんではないか、と思わなくもありません。 […]

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