アメリカ 2016
監督 ティム・ミラー
原作 ファビアン・シニーザ、ロブ・ライフェルド

まあ、可もなく不可もなく、といったところでしょうでしょうか。
R指定なアンチヒーローっていうからいったいどれほどゲスで下品なんだろう、と期待してたんですが、いざ蓋をあけてみればただひたすらしゃべりまくるだけでさほど毒があるわけでも、下ネタ満載なわけでもなく。
しかもそのトークがですね、私の感覚からするとそれほど笑えないんですよね。
どうにも楽屋オチ気味なんです。
X-MENをよく知ってる方からすればくすりとくる内容なのかもしれませんが、見始めるまでアベンジャーズと混同していた私のような人間からしてみると、何を言ってるのかわかんない部分もちらほら。
内輪受けとまではいいませんが、やっぱりその手のファンに向けた内向きのネタが多かったように思います。
そこでつまづいた、ってのがまずあって。
それにね、デッドプールが二目と見られぬ容貌を気に病んでこのようなキャラになっちゃったんだ、としたらですね、その軽口の裏側には虚勢が見え隠れしてなくちゃならないはずだ、と私は思うんですね。
異形である自分を堂々とさらすことの出来ない苦悩、不遇を呪う怨嗟が心の底には渦巻いてなきゃおかしい。
それがあのキャラからは見えてこないんですよね。
マシンガントークに連動するかのように、主人公ウェイドの心の有りようがえらく紋切り型、かつ軽い調子で描かれてるのはやはり表層的、と言わざるを得ない。
早い話がすごい運命をたどってるのに、それを全然自覚してないバカに見えてしまうわけです。
だから異端のヒーローがたったひとつ大事にしていたかつての恋人との再会も、いまいち心に響いてこない。
同居人の盲目の婆さんにしたって、結構大事な登場人物に成りえたはずなのにほとんどお飾りな状態だったことも気になった。
ほんの少しでいいんで止まらぬおしゃべりの間にふとした影を見せる演出があればね、これ、やせ我慢の美学みたいなものがずいっ、と頭をもたげてきて、各シーンの意味も全然違ってきた、と思うんですよ。
そこはやっぱり監督の経験不足か、と。
あと気になったのはCG全開のアクションシーン。
もう、なんでもやれてしまうことは周知の事実なわけです。
だからといって、そこに丸ごと便乗してなんでもやってしまうのは、そりゃゲームと変わらないだろ、と思うわけです。
なんでもやれるからこそ、あえてやらない選択も織り交ぜることでより肉感的に伝わるものって、きっとあるはずなんです。
100%可能であるからこそ、逆に高いセンスが必要とされる、ってことを制作陣は少しは考えた方がいい、と思う次第。
正直私は物理法則を無視しまくる動きに途中でちょっと飽きてきた。
まあ、アメコミ以上のものを求めすぎなのかもしれませんけど。
老若男女が広く楽しめるもの、として枝を切りそろえていけばこうなるのが妥当なのかもしれません。
おもしろかった、という人たちに難癖をつけるつもりは毛頭ないんですが、続編を作るつもりなら、改善すべき点はないわけじゃないと思うよ、と言ったところでしょうか。