2002年初出 羽生生純
エンターブレインビームコミックス

描けなくなった漫画家と起死回生をもくろむ編集者が何故かヤクザとかかわりあいを持ち、ヒットマンとして殺人を重ね、逃亡生活を余儀なくされるという破天荒なサスペンス。
漫画家と編集者というとなんだか特異な印象を受けますが、職業を別にすれば、まあ、この手の転落型ドラマは昔から洋画なんかでよくあるタイプだとは思います。
ですんで、陰惨で狂気に満ちた独特の筆致で綴られる物語ではあるんですが、そこに既視感はどうしたってあるんですよね。
色んな人間を巻き込んで、最後には自分自身の物語を作るために殺人計画を遂行しようとする漫画家の行動や、自己犠牲にひたすらいそしむヒロイン等、本当にぶっこわれた人間ばかりが登場して、その語り口に鬼気迫るものはありますが、ああ、後一歩届かなかったなあ、と言う印象でしょうか。
登場人物が漫画家の物語のために行動するのであれば、そこでさらに踏み込んで、例えばメタフィクション化するとかね、あと少し発想を飛躍させて欲しかった。
やっぱり予想どうりの結末、エンディングなんですね。
終盤、もう、救いようがない、ってのが普通に伝わってくるし、それがそのまま終わってしまったことの意外性のなさは、これだけ盛り上げておいてこのオチかよ、って、どうしたってなる。
衝動だけで描かれた作品のような気もしますね。
ただ、この作品を経て作者のドラマツルギーは完成を見たような気もします。
仕上がり具合を別にするなら、孤高性は高いかもしれません。