ディボース・ショウ

アメリカ 2003
監督 ジョエル・コーエン
脚本 ロバート・ラムゼイ、マシュー・ストーン、コーエン兄弟

ディボース・ショウ

婚前契約書を逆手にとって離婚サギを繰り返す女と、そんな女に惚れてしまった離婚訴訟を専門にする凄腕弁護士の虚々実々な駆け引きを描いたラブコメディ。

プロットは実におもしろかった、と思うんです。

どこまでが本音でどこまでが嘘なのか、これはテクニックなのか、それとも素なのか、まさに狐と狸の化かし合い、なんせお互いがその道に精通している者同士なわけですから、そのやりとりが見てて楽しくないはずがない。

オー・ブラザーに続いてのジョージ・クルーニーの三枚目な役どころも、ちょっとスカしたところが鼻につきはするもののはまっていたように思います。

相変わらずおかしなキャラもまんべんなく登場してきますし。

訴訟大国のカリカチュアかよ、とでもつっこみたくなるマッドサイエンティスト風な弁護士事務所のボスには腹を抱えましたし、なまりまくってるビリー・ボブ・ソーントンもほんとばかばかしくてコーエン兄弟らしい。

ただね、ちょっと誰もが共感しやすいところに物語を置きにいった傾向はあるかな、と。

しかも置きにいったにもかかわず、それを上手に安置できてないんじゃないか、と。

描かれるべきは「結婚は契約である」とするがんじがらめな夫婦生活への強烈な皮肉であり、それを知り尽くしている二人の間に本当に愛情は存在するのか、だったと思うんですね。 

前者については毒が足りないし、後者については体裁だけ取り繕って適当にまとめた感が強い。

こんなはずじゃなかったのに、何故か本気でお互いが恋に落ちてしまったくだりを説得力たっぷりに描いてこそ観客はカタルシスを得られるわけですよね。

なぜかそこを監督はかいつまむように軽く流しちゃうんです。

肝心なところであっさりすかされてしまった、とでもいうか。

もう、エンディングの尻すぼみ感ときたら半端じゃない。

キャサリン・ゼタ=ジョーンズの役作りも甘いように思えた。

ただ悪女なだけなんですね。

それ以上のものが何も見えてこない。

らしい作品なんですが、どこかいつもと違うことをやろうとして集中力が途切れてしまったかのような印象。

やっぱり根っからのマイナーで職人気質なのかなあ、なんて思ったりもしましたね。

脚本に兄弟以外の他者の手が入ったことがなにか影響を及ぼしていたのかもしれません。

もっと面白くなったはずなのになんだか萎んでしまった残念な一作。

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