ドイツ 1981
監督 ウォルフガング・ペーターゼン
原作 ロータル・ギュンター=ブーハイム
ペータゼン監督の評価をゆるぎないものとし、彼のハリウッド進出への足がかりとなった作品ですが、なるほど看板に偽りなし、と思った次第。
なんといっても見事だったのは閉鎖的空間である潜水艦内部の圧迫感に満ちた演出でしょうね。
今にも水圧に押しつぶされるんじゃないか、沈んでしまうんじゃないか、といった恐怖を、音響、乗組員の細やかな演技、狭い艦内を駆け巡る丹念なカメラワークでこれでもかと強調。
普通に見てるだけで手に汗握る。
戦争映画なのは間違いなんですが、スリルを至近に感じるという意味で、どこか海洋冒険ものみたいな感触もあるのがこの作品の独特な点。
暗くなりがち、気持ちが沈みがちなこの手のジャンルにおいて、そういった側面をも併せ持つ、というのは稀有なケースであるように思います。
さらにうまかったのは、終盤、海底からの決死の脱出劇を最大の見せ場として臨場感たっぷりに描きながら、あの衝撃のラストシーンへと強烈な落差をつけて見せたこと。
勇気も努力も才能も工夫もすべて台無しにしてしまうのが戦争なんだよ、と知らしめたその虚無感たるや、見事戦争の本質をえぐり取ってる、と思いました。
最後の最後で観客の高揚感を一気に吹き消す手腕は、あたかも作品のテーマをそのままなぞっているかのようにも思え、すべてを追体験しているような錯覚すら覚えましたね。
とても80年代の作品とは思えない古びぬ映像にも感嘆。
40億円の巨費を投入して作られた作品らしいですが、たとえCGなんざ存在しなくても、どうすればリアリティを損なわず、作りものっぽく見えないように撮れるかをきちんと考えて製作された作品は劣化しないんだなあ、とあらためて唸らされましたね。
唯一、難点をあげるとしたら、乗組員の人物像がちゃんと描ききれていない、と感じた部分ぐらいでしょうか。
でもこれは本来6時間あった映像を3時間弱にまとめたものですから仕方がなかったのかも。
一見の価値はある大作だと思います。
本来テレビシリーズだったものを編集してここまでのレベルのものができてしまうという事だけでも驚異でしょう。
こんな映画、そうざらにあるもんじゃないと思いますね。
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