アメリカ 2011
監督 ターセム・シン
脚本 ヴラス・パルラパニデス、チャーリー・パルラパニデス

神話を下敷きに、紀元前のギリシャを舞台としたヒロイックファンタジー。
まあその、身も蓋もない言い方をするなら、何も考えずに見る分には問題ないでしょう、と。
適度にアクションシーンもあって、それなりに眼をひく映像の美しさもありますし。
俄然光ってるのは石岡暎子氏がデザインした巫女の衣装でしょうね。
ターセム監督といえばおなじみのタッグではありますが、本当にこの人は素晴らしい仕事をしてると思います。
巫女が登場しただけでなんだこれは、と画面に釘付けになった。
「300」の制作陣が関わっているだけはあって、スローモーションを多用した剣戟シーンもいい出来だったと思います。
血飛沫飛び散る圧巻のアクションは、香港カンフー映画にも肉薄するド迫力の肉弾戦でしたね。
従来とは全く違うベクトルから「生身の鍛錬を必要としない見せるためのアクション」を形にした映像テクニックは注目に値するものだったんじゃないでしょうか。
ただ、 昔からターセム・シンを追っている身からするとですね、彼の得意とするミスマッチの映像美は封印されてしまったようにも感じてます。
そもそもがCGまみれですからミスマッチもクソもないわけですけど。
彼本来の作家性みたいなものはかなり希薄。
別にこれ、他の監督でもよかったんじゃあ、というのは言いすぎか。
あと気になったのはドラマ不在なこと。
なぜテセウスが救世主扱いなのかよくわからないなあ、と思ったのを端緒に、まあストーリー展開の上滑ること、上滑ること。
心に響くもの、皆無。
そもそも登場人物、誰一人としてキャラクターが立ってないんですよね。
全部役割を振られただけの記号なんです。
さすがにミッキー・ローク演じる敵の親玉は役者の力量がものをいってやたらと存在感がありましたが。
それ以外がもう、どうにもこうにも。
監督、元々演出が怪しい人ではありましたがそれが今回、見事に露呈しちゃったかな、と。
見終わってみれば、目の前スレスレを10トントラックが猛スピードで通りすぎていったような驚きはあったものの、ふと思い返すと肝心のトラックの車種や色、運転手の姿なんかは全く思い出せない、ってな映画だったな、と。
ダメだとは言いませんが酒飲みながら見るぐらいがちょうどいいかも。
2を作る気満々のエンディングでしたがどうなるんでしょうね?
私は多分見ないと思いますが。