おともだち

1983年初版 高野文子
綺譚社

<収録短編>
盛子さまのひなまつり
上海の街角で
春ノ波止場デウマレタ鳥ハ
ボビー&ハーシー
ディビスの計画

やはり突出しているのは「春ノ波止場デウマレタ鳥ハ」でしょうね。

この中編の美しさ、躍動感、叙情性はただごとではないです。

御大手塚治虫の薫陶を礎に宮崎駿の美意識に迫ろうかという名編。

作中劇で披露される「青い鳥」からは歌が聞こえてきます。

聞こえるはずのない旋律が鼓膜をうつ。

もう鳥肌の連続。

音楽をどうマンガで表現するか、と言う試みはこれまで幾度もあらゆる作品で試行錯誤が繰り返されてきたと思うんですが、間違いなくその最高峰に位置する一編。

もちろんそれだけが本作の魅力の全てではないんですけどね。

文句なし大傑作。

この中編のためだけに買って損はなし。

絶対安全剃刀では実験的な作風が目立った作者ですが、これだけのことができるからこそ前衛をも弄べたのだ、と実感できる作品集でしょうね。

高野文子の尋常ならざる才能の一片に触れることが出来る一冊。

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