ブルガリア/スペイン/アメリカ/カナダ 2014
監督 ガベ・イバニュス
脚本 ガベ・イバニュス、イゴール・レガレッタ・ゴメス、ハビエル・サンチェス・ドナテ

まあはっきり言ってしまうならプロット、シナリオともにどこかで見たような印象が強く、手垢感は濃厚です。
本来人間のサポートに徹するはずだったロボットが自律制御しだして驚異の存在に・・・ってなストーリー自体、もう本当に古くから使いまわされ続けてきたパターンであり、もはや様式といってもいいディストピアSFの定番であって、なぜそれを今更あらためてやる必要が?ってのは当然あるわけです。
アシモフのロボット三原則の上澄みをすくいあげたような、二つのプロトコルによる制約が作品にはルールとして存在してますんで、 監督はまるでSFには詳しくない、ってわけじゃあないとは思うんですが、それにしたってあまりに「ひねり」がなさすぎる。
世界の作り込みも甘いです。
一体の金額がとんでもない額になるオートマタが大量に働く世界なら、それは徹底した管理社会じゃないと成立しえない、と私は思うんですね。
人口が2100万人にまで激減し格差化、衰退した社会で、一般家庭のペットの世話にまでオートマタって、ブルジョワすぎるだろ一般人、って話であって。
コストを考えるなら生産性と普及率のバランスがおかしすぎる。
オートマタはひょっとして全部レンタルなのか?と、思わず前半を見なおしたりもしましたよ、私は。
さらには、歩行器にすがって歩くオートマタが出てくるシーンにいたってはもう完全にやりすぎ。
断片的にそれらしい思いつきを全部放り込んだところで、それが未来世界のデティールを補完することにはならないわけで。
サスペンス風の展開がいつのまにかうやむやになってしまう終盤もいただけない。
なにがオートマタの進化を促したのか、もう少し見る側が核心を想像できる、示唆的な場面を用意していただきたかった。
思わせぶりなままプロセスをすっ飛ばして結果だけで物語を結んじゃってる状態なんですね。
早い話が全体に構築性がない。
ただこの作品、妙に雰囲気作りはうまい、と思うんですね。
荒廃した未来社会を嘘くさくなく映像にするセンスは優れてる、とは感じた。
オートマタのデザインもチャッピーとは大違いで無機的なシンプルさがいい。
だからそこに「のせられる」というのはありました。
なんとなく最後まで見れてしまう。
唯一よくやった、と思ったのはオートマタが最後まで決して人間に手を出そうとはしなかった点。
これがもし凶暴化してたりしたら私の中では完全にダメ映画で終わってたことでしょう。
反撃に転じないオートマタと、ただ未知の存在に怯え虐殺することしか頭にない人間、この構図はなにかを暗示しているかのようで、とても興味深かったですね。
きっちり練り上げられたシナリオがあればいい映画を撮る監督かも、とは思いました。
余談ですがアントニオ・バンデラスは禿頭にするとなんだか貧相に見える。
ひょっとしてブルース・ウィリスの後釜に座ろうとしてるのか?