フランス/ドイツ/ベルギー/カナダ 2009
監督、脚本 ジャコ・ヴァン・ドルマル

全ての人類が不老不死を実現した世界で、最後に死を迎える老人ニモの回想を描いたSF大作。
それにしてもこのドルマルという監督はトト・ザ・ヒーローしかり、老境の回顧録をプロットとするのが好きな人ですね。
つまり、器はSFなんですが、様式はトトとほぼ同じなんです。
何が違うのか、というとトトのように最終的なテーマとして懺悔、改悛がそこにはない、ってことぐらいでしょうか。
で、この作品、 ややこしいのが、もしあの時、違う選択をしたらどうなっていたか、という別の人生のシナリオすべてをドラマにしていること。
はっきりいって混乱します。
話は飛ぶわ、ストーリーは一本道じゃないわで、一体何をどうしたかったのか、私には最後の最後までよくわからなかった。
それはエンドロールが流れ出しても変わらなくて。
描き出された幾通りもの違う人生の断片が、一体何を意味していたのか、だからどうしたんだ?と頭を抱えるしかない、というか。
さらに辛辣なことを言うなら、最初の設定である不老不死を実現した世界、というのが物語の本筋になんの影響も及ぼしてないんですね。
根本的にSFである必要がない、という。
もちろんそれなりのオチは用意されてます。
ただですね、このオチを本気で受け止めていいものなのかどうか、私は非常に迷うわけです。
だってね、これ禁じ手なんですよ。
特にSF、ファンタジーの世界では絶対やってはいけないことなんです。
それを知らずにやったとは思えないですし、かといって他になにか解釈できるとも思えない、うーん、正直お手上げですね。
ウォシャウスキー姉弟が2012年に発表したクラウド・アトラスと似た質感があるんで、あの作品がお気に入りな人にとってはそれなりに楽しめるかもしれませんが、私個人的にはこれ、まとめきれてないしアイディアも煮詰め切れてない、と感じました。
あんまりSFに向いてないんじゃあ、と思ったりも。
体裁はそれなりにもっともらしく、なにかありそうに思えるんですが、それがなんだったのか私にはどうにも伝わってこない1本でしたね。