アメリカ 1974
監督、脚本 ジョン・カサヴェテス
強迫神経症なのかパニック障害なのか判別はつかないんですが、その系統の精神障害を抱えた妻とその家族の愛憎と、とまどいを描いた作品。
グロリアで主演をつとめたジーナ・ローランズが妻役で出演してますが、凄まじい演技を披露してます。
とても後年のグロリアと同一人物とは思えないほどこわれた女を熱演。
もうそれだけで見た価値があった、と思えるほど。
描かれているのは精神疾患に無理解な夫とその家族、まだ治療法が整備されていない医療であったり、社会の不寛容だったりするんですが、なんといいますか、ひたすら痛々しいです。
もう子供にしか夫婦のよすがが残されてないんですね。
ストーリーの落とし所もそこだったように私は解釈。
現在の認識ではかるなら、それが決して妻の病状を根本的に完治させるものではないことがわかりきってるだけに見ていてただただ辛い。
監督は心を病む妻をもてあましながらも決して見捨てようとはしない夫に、これもまたひとつの愛の形なのだとメッセージをこめたつもりなのかもしれませんが、先々を考えると悲劇しか待っていないように私には思えて、なにかもっと別のやり方がなかったものなのだろうか?ともどかしいやら、時代性を哀れむやら。
まあ、そこまで感情移入しなくてもいいんでしょうが。
迫真、といっていい役者達のぶつかり合いによる濃厚なドラマが堪能できることは確かでしょうね。
ただ、ハリウッドに背を向けてまで監督が自主制作した作品なだけはあって、余計なシーンが多すぎるとか、リズムがないとか、シナリオ展開が淡々としすぎてるとか、あれこれ感じる人はいるかもしれません。
かくいう私も正直長い、と思った。
でもそれがカサヴェテス監督の、メジャーにおもねることのない彼だけの表現なんでしょうし。
評価の難しい映画です。
ジーナの名演目当てで見るぐらいが、私と同じようなライトなファンにはちょうどいいかも。