1987~90年初出 ささやななえこ
角川ホラー文庫
急死した祖母の家で、二人暮しを始めた義理の姉弟を主人公とした連作伝奇ホラー。
ささやさんの作品を熱心に追っているわけではないので断言は出来ませんが、恐怖路線の作品としては作者最高傑作なのではあるまいか、と言う気がしますね。
かほどに出来が良い。
しかし、まさか女性誌掲載作品で、たたら神やえびす信仰なんて単語が出てくるとは思いませんでした。
南紀地方に伝わる伝承が作品の背景として、怪異に彩られたドラマを説得力で支えてるんですね。
資料や文献を読み込んだ上でプロットを練り上げてるのがよくわかる。
化生曼陀羅では幾分不透明だったものがここにきて俄然輪郭を帯びてきた感じですね。
諸星大二郎に肉薄、と言っていいでしょう、これは。
女流漫画家でここまでやった人をあたしゃ他に知らない
清美と道子のなにかとややこしい恋路を作品に織り込んだのも秀逸。
女性ならでは感性が光る伝奇ホラー、という唯一無二の世界観を見せつけた一作ではないでしょうか。
その後にこの系統の作品が発表されていないのが本当に残念。
ライバル不在だと思うんですけどね、やっぱりこの手の路線はあたらないのかなあ。
完成度の高さに驚かされました。
先入観抜きにして一読の価値あり。