アメリカ 2000
監督 ダーレン・アロノフスキー
原作 ヒューバート・セルビー・Jr
物語そのものは至極単純。
ドラッグに溺れるカップルと、その友人、そしてその母親、合計4人が薬をやめられずどこまでも転落していく様を描いた作品。
まあ、先の展開が見通せるストーリーです。
なんだよこれ、どこかの公共機関が薬物撲滅目的で作った作品かよ、と揶揄したくなるなるような内容なんですが、監督が凄かったのはそのありがちなシナリオを、徹底的に残酷に、どこまでも救いなく、孕む狂気も垂れ流しなまま持てるテクニックを尽くして恐怖で彩ったこと。
「モンスターの登場しないホラー映画」とはよく言った。
いやもうこれ、マジで怖いです。
理屈じゃわかってるんです。
薬物の常習者がどうなるか、って事ぐらい。
でもそれを、虚構とは思えぬリアリズムをちらつかせながらどこまでも悲劇的に、過激な作り込みで見せつけられると、痛々しいのを飛び越えてなんだか心臓が痛くなってくる。
特に強烈なのが薬物で幻覚を見はじめる母親のシーン。
テレビ出演にとりつかれた老女の気の触れた妄想をこれでもかと描写。
人間が壊れていく様子をこだわりぬいて演出。
ひりつくような不穏さがざわつく譫妄とランデヴー。
なんだもう途中から動悸が止まらない。
見終わって鉛を呑んだような気分でしたね。
薄気味悪いとか、嫌なものを見た、とかじゃなくて、なにか根源的な忌まわしさを強引に押し付けられたような心持ち。
二度と見ない、と思います。
ですが未見の人は一度は見ておいてもいいのでは、と思います。
破滅に美なんて存在しないのだ、あるのは死に切れない醜悪さだけ、などととんでもなく虚無的な気分になった一作。
こう言い切ってしまっていいのか、悩む自分もいるんですが、忘れられないと言う意味で「傑作」でしょうね。
とりあえず、体調のいい時に見ましょう、うん。