アメリカ 2006
監督 ブライアン・デ・パルマ
原作 ジェームズ・エルロイ
40年代ロサンジェルスで実際に起こった猟奇殺人事件を題材にしたサスペンス。
映像はセピアに仄暗く当時を再現しようと凝った作りで、いつものデパルマらしい派手さはやや控え目か。
シックに演出したかったのだと思うんですが、猥雑でエキセントリックなのはいつもどおりなので、どこか噛みあわせが悪いというか、馴染まないものを感じたり。
どうせなら徹底してフィルムノワールな感じにすればよかったのに、と思わなくもありません。
まあでもそれよりも問題なのはやはりシナリオでしょうね。
詰め込みすぎ、というのが一番わかりやすいかと思うんですが、物語の焦点がブラックダリア殺人事件のみに絞りきれてないんです。
原作の多種多様な人間模様をすべて描こう、と思ったのかもしれませんが、2時間の作品でこれほど多くの登場人物が存在して、なおかつその裏側や、隠された謎まで暴こうとすると、どうしたってストーリーは表層的にならざるを得ない。
なにをそぎ落として、なにを残すのか、製作者側のミーティングが不十分だったのでは、と邪推したくもなる。
バッキーとリー、ケイの3人のみを丁寧に描けばそれでよかったのでは、と思いましたね、私は。
枝葉末節にまで気を配りすぎ、というか。
最後の最後まで盛り上がることなく、ただただリーが迷走して終わってしまった、ってな印象。
もともとデパルマのサスペンスって、もっとわかりやすくて一本道だったと思うんですけどね、どうしたんでしょうかね、知的な構築美にでもこだわりたくなったんでしょうかね。
うーん、失敗作だと思います。
妙に疲れた1本でした。