アメリカ/フランス 2013
監督、脚本 ジェレミー・ソルニエ
あ、これはちょっと他とは違う、と私が思ったのは、過剰な説明や、余計なセリフが作中から一切排除されてること。
ストーリーを追う上で、きわめて重要であろうと思われる、発端となった過去の事件についてすら詳しく言及されないんです。
なのに、ひきつけられるように画面から目が離せない。
何もかもが全部状況と絵で語りつくされてるんですね。
サビの浮き出た古い車で寝起きする、人生を投げちゃった風に見える主人公。
それがある囚人の出所を知って、突然動き出す。
銃の扱いもままならないのに、激情にかられてナイフを手に元囚人を尾行するドワイト。
観客に対する不親切さが全部効果的に機能してる、とでもいいましょうか。
全編をつらぬくひりつくようなリアリズム。
そこに筋骨隆々なアクションスターも、卓越した体術の使い手も存在しない。
ただ運に恵まれて、でも運に流されて、連鎖していく復讐劇。
ああ、これはもう絶対救いは用意されてないわ、と途中で確信。
なにかが新しいわけでも、あっといわせるオチが待ち受けてるわけでもないんです。
でもこの退廃的で重苦しいトーンの物語が演出するビターな終幕は、ひどく私の心に残りました。
こう言う作品を見ちゃうと映画ってのは結局シナリオでも役者でもなくて、何をどう見せるか、につきるのかもなあ、なんて思っちゃいますね。
予想外の秀作だと思います。
古い犯罪映画とか思い出してしまいましたね。